2005 Fiscal Year Annual Research Report
慢性疼痛発生における個体差についての研究-近交系マウスを用いた遺伝学的検討-
Project/Area Number |
16790893
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
山崎 肇 獨協医科大学, 医学部, 講師 (10372898)
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Keywords | 慢性疼痛 / アロディニア / 脊髄後角 / DBA / 2J系マウス / A / J系マウス / 侵害受容伝達 / 下降性抑制系 / 遺伝的個体差 |
Research Abstract |
慢性疼痛の発症には脊髄後角における侵害需要伝達の変調が関与していることが容易に推測され,脊髄後角における侵害需要伝達の遺伝学的個体差について調べるために,脊髄スライス標本を用いた脊髄後角表層の神経細胞におけるホールセル・パッチクランプ記録を行った。そして,坐骨神経を部分結紮によりアロディニアが発症したマウスの脊髄スライス標本では,部分結紮側では非結紮に比べて,微小シナプス後電流(mEPSCs)の頻度が増加し,さらに神経線維の電気刺激により脊髄後角表層神経細胞に誘発される興奮性シナプス後電流(eEPSCs)の振幅が増大することが観察された。 前年度の研究における行動学的検討では,A/J系マウスはDBA/2J系マウスと比較して,疼痛閾値が低く,坐骨神経の部分結紮後のアロディニアの発症は強いことが観察されていたため,ホールセル・パッチクランプ記録で観察されるmEPSCsやeEPSCsの特徴にA/J系マウスとDBA/2J系マウス間に何らかの差が認められることを推測したが,現在までにその差を見出すことはできなかった。これらの結果から,疼痛閾値や部分結紮後に生じるアロディニアの発生における遺伝的個体差の出現の要因として,脊髄後角における侵害需要伝達の変調の個体差である可能性は現時点では低いかもしれない。 一方,生体内における痛みの制御においては,侵害需要伝達痛の他に内因性の下降性抑制系が重要な働きをしており,むしろこの内因性の下降性抑制系の個体差が疼痛閾値や部分結紮後に生じるアロディニアの発生における遺伝的個体差の出現の要因であるかもしれない。今後は,内因性の下降性抑制系についての遺伝的個体差に主眼をおいて,慢性疼痛発症の個体差の要因について検討を続けていく予定である。
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Research Products
(6 results)