2004 Fiscal Year Annual Research Report
低侵襲自己濃厚血小板分離と臓器虚血再灌流障害の抑制について
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16790901
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
上田 沙和子 久留米大学, 医学部, 助手 (00368953)
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Keywords | 開心術 / 自己血小板採血 / 血管内皮障害 / 画像解析 / 血小板凝集能 / 重力障害 / 虚血再灌流障害 |
Research Abstract |
体外循環前に採血した自己血輸血は、体外循環による血小板機能不全を避け、他家血輸血の削減に有用である。しかしながら、多量の全血採血では体外循環中の低Hb血漿をきたす症例がある。このような症例には体外循環前に血液分離装置を使用し自己濃厚血小板血漿を採取することは有用だが、この装置は高重力で採血するため血小板機能を障害させる。術中採血した全血を低重力下に血小板を分離できれば新鮮自己血小板血漿を温存でき有用な方法である。臨床研究【目的】自己全血から低重力または高重力で血小板を分離し、採取した自己濃厚血小板血漿治療が周術期の血小板凝集能に与える影響を比較検討した。【対象】開心術予定患者44名を対象とした。非採血群(n=15、平均年齢61歳、平均体重49kg、平均体外循環時間193分),高重力群(n=13、69歳、56kg、238分)、低重力群(n=16、65歳、60kg、146分)であった。低重力血小板分離の手順:麻酔導入後CPBの前に右内頚静脈に挿入した9Fr.シースより自己血貯留パックに脱血した約800mlの新鮮自己血を、100 G 30分間、汎用遠心器(kubota8410)にて遠心分離した。遠心した血液をテルモ分離スタンドにて血球成分の上層まで自己血貯留パックに移した。高重力血小板分離の手順:麻酔導入後CPBの前に右内頚静脈に挿入した9Fr.シースより脱血した静脈血を血液成分分離装置(Amicus)に導き960G 60分間で分離し、約600mlの自己濃厚血小板血漿を得た。残りの血液成分は末梢静脈に留置したカテーテルからオンラインで返血した。処理血液量3600ml。血小板凝集能の測定方法:透光度型血小板凝集能測定装置(ヘマ・トレーサー【○!R】、MCメディカル社製)を用いコラーゲン刺激(2.0ug/ml)による透過度を測定した。【結果】採取自己濃厚血小板血漿量(低重力群:607±22ml)(高重力群:591±38ml)採取血小板数(低重力群:12.4×1010)(高重力群:33.2×1010)採取血小板の凝集能(低重力群:75±7%)(高重力群:55±20%)【結論】低重力下に分離採取した自己濃厚血小板血漿は、高重力血小板分離群と同程度に体外循環後の血小板機能を改善させる。低重力による自己濃厚血小板血漿分離法は簡便で特殊な装置を必要としない体外循環後の血小板機能障害に対して有用な治療方法である。 基礎実験準備:今年度はマイクロベッセルパーフジョンシステムを構築した。これにより血管内皮障害による血管運動を直視下に観察できるようになった。さらに、アナログ情報と画像情報を同期して連続保存するソフトを開発している。これにより血管運動の二次元的解析が可能になる。来年度は実際にこれらの装置を導入し保存血小板崩壊によるセロトニン、ATPによる血管内皮機能への影響を観察したい。
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