Research Abstract |
移植・再植歯の長期保存法を確立するため以下の実験を行った. (1)歯の抜去 全身麻酔を施した成犬の歯牙を抜去する. (2)歯の保存 保存液はUW液を用いた.保存条件は氷温(-2℃),冷蔵(4℃), 凍結(-80℃)とし,保存期間は2,4,6,8週間とした. (3)歯の移植 移植歯保存終了後,移植床を顎骨内に作製し,保存歯牙を移植した. (4)試料の作製 8週後,移植歯を含む顎骨を摘出し,従い脱灰組織切片の作製を行った. 歯の長軸に平行な切片を中央部から20μmおきに4μmの厚みで薄例し,H.E.染色した. (5)織学的計測分析 組織学的分析は以下の4つに分類する. 1.再生歯根膜組織 2.表面吸収 3.炎症性吸収.置換性吸収 この分類法を用いてそれぞれの歯につき20〜25カ所で診査した. 各々の実験例における割合を計測し,冷蔵,凍結,氷温保存に対して統計分析を行った. その結果,冷蔵保存例では2週保存は炎症性吸収の割合が高く、4、6、8週保存は置換性吸収の割合が高かった.凍結保存例では2,4,6,8週ともに置換性吸収の割合が高かった.氷温保存は2,4,6週保存に治癒歯周組織の割合が高く,8週保存は炎症性吸収の割合が大きくなった.移植歯の予後が最も悪くなる置換性吸収の発生率は冷蔵,凍結保存例で高く,氷温保存例に比較して有意に高かった.一方,治癒歯周組織の発生率は冷蔵,凍結保存例に比較して氷温保存例で有意に高く,氷温保存例の治癒率は良好であった.氷温保存例において2,4,6週保存の治癒歯周組織を比較分析した結果,有意差が認められなかったのは注目すべき点であり,これは氷温保存法を用いた移植歯がある一定内の保存期間は予後に影響しないことを意味している.
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