2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16791273
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
野口 一馬 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (50309473)
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Keywords | 腺様嚢胞癌 / ケモカイン / 肺転移 / 血行性転移 |
Research Abstract |
腺様嚢胞癌(ACC)は、きわめて緩徐な発育と著明な浸潤性増殖、早期の肺への血行性転移を示す唾液腺悪性腫瘍で、浸潤・転移においてきわめて特異的な性質を持つ。近年、癌細胞におけるケモカインレセプターの発現と転移機構の関連が報告されており、中でもCXCL12(SDF-1)のレセプターであるCXCR4の発現が肺転移・リンパ節転移・骨転移などの臓器特異的転移形成過程における関与が示唆されている。 われわれは、肺へ特異的に転移することが多いACCの臓器特異的転移過程の解析するため、1991年から当科で治療を行い、経過観察が可能であったACC患者11名の原発巣に対し、H-E法で病理組織型、IHC法にてCXCR4の発現、胸部レントゲン写真とCTより頸部および肺転移の有無を検索した。その結果、CXCR4の発現は前例に認められたが、発現強度は異なりcribriform typeに比べてsolid typeの組織に強い発現を認めた。CXCR4高発現群は、8例中5例(62.5%)に肺転移を8例中2例(25%)にリンパ節転移を認めた。低発現群の3例はいずれも肺転移、リンパ節転移を認めなかった。 さらにACC培養細胞株であるACCS, ACCH, ACCNSと肺高転移株ACCMについてCXCR4の発現を検討した結果、ACCMは他の細胞株と比較してCXCR4の発現が強いことが示された。また、ACC細胞群のCXCR4の発現は扁平上皮癌(SCC)のCXCR4の発現と比較して発現強度が高いことが確認された。さらに、これらACC細胞株4株とSCC細胞株4株についてchemotaxis assayを行ったところACCにおけるCXCR4の発現強度に相関した浸潤能の差は見られなかったが、ACCとSCCを比較するとCXCR4の発現が優位なACCがSCCと比較して明らかに高い浸潤能を示した。 また、当科で継代しているACCヌードマウス背部皮下腫瘍株は、cribriform typeのACCから得られたものであるが、継代を続けるにしたがって腫瘍の増殖速度は早くなり、組織型もcribriform typeからsolid typeへの変化を示す腫瘍株である。本腫瘍株におけるCXCR4の発現を検討した結果、継代を経るにしたがってCXCR4の発現が強くなり、solid typeの腫瘍組織に強く発現するようになることが明らかになった。 ACCはsolid typeが高転移能を有することは経験的に知られていたが、細胞が転移能を獲得するに従い、CXCR4の発現が増強されることが示された。
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