2017 Fiscal Year Annual Research Report
Advanced data analyses for gravitational waves
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16F16025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 貴浩 京都大学, 理学研究科, 教授 (40281117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
NAIR REMYA 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-10-07 – 2019-03-31
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Keywords | 宇宙物理学 / 重力波 / データ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究で、地上の重力波検出器と宇宙での重力波観測から得られるデータを組み合わせることにより、電磁波対応天体の期待できない連星ブラックホールに対する位置決定精度が飛躍的に向上し、ホスト銀河の同定の可能性が大きく広がることを明らかにした。連星ブラックホールの起源を明らかにする上で重力波源が付随する銀河を同定することは大きな意味を持つ。このシナジー効果はB-DECIGOと呼ばれるDECIGO計画の前段階の計画のレベルの感度であっても顕著であり、B-DECIGOを推進する上で大きなモチベーションを与えるものである。 位置決定精度を問題にするため、衛星や地上の検出器の運動を取り入れた解析が必要とされる。純粋に解析的な表式を得ることはできないため、具体的に天球上に様々な全角運動量の向きを持った重力波源を多数用意し、共分散行列、および、その逆行列であるフィッシャー行列を求めた。シナジー効果を調べるためには、複数の検出器から得られるフィッシャー行列を足し合わせて、全体の系としての共分散行列を求める手法を用いた。加えて、B-DECIGO計画においては地球の周りを周回する衛星軌道を採用する可能性も議論されている。そのため、このような衛星軌道を選んだ場合の重力波波形についての考察も深めた。この結果を論文としてまとめる作業を進めている。 上記の研究に並行して、Nair氏は連星ブラックホールからの重力波観測を使って、対応する銀河との相関解析をおこなうことで、どれだけHubble定数を決定できるかという研究を行っていた。この研究の成果は、出版はされていないものの論文として発表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度にも報告したように、以前におこなった解析のパラメータを増やすだけの作業と考えていたが、行列反転での精度が保証される計算を実現することに時間が掛かってしまっている。また、考えている衛星の軌道もこれまでの文献に扱い方が記されているものではなく、結果を見て予想と異なることから、解析の方法に誤りがあることに後から気付くなどの試行錯誤を繰り返してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
LIGO/Virgoによる重力波の検出は広く知られているところであるが、LIGOによる実際の重力波観測データの公開も進んでいる。実際、イベント周辺の重力波信号のデータや、LIGO O1の全時系列データが既に公開されている。この重力波データに対して、マッチドフィルタリングを基本とする様々な修正重力理論のテストを実施する。まずは、波形の予測が進んでおりマッチドフィルタリングによるテストが可能な質量を持ったスカラー場を持つスカラー-テンソル理論を中心に具体的な解析を進めていく。外国人研究員としての滞在期間は残り少なく、もっと早くこの課題に着手できていればよかったのだが、先の研究を進めるのに予想以上の時間を費やしてしまった。残りの期間は外国人研究員の任期終了後も引き続き共同研究が続けられるよう、上記の問題に取り組むことを通じて、修正重力理論に対応した重力波データ解析の基礎を築く。加えて、機械学習などを応用した先進的な重力波解析に対する研究も進める。そのために、現在、科研費で雇用している山田慧生君や内潟奈美君、学術振興会特別研究員である成川達也君、博士後期課程学生の山本貴宏君らとともに定期的なゼミを開くとともに、共同研究のネットワークを広げるために国内外の学会に参加して情報を収集する。
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