2016 Fiscal Year Annual Research Report
バングラデッシュと日本における教室での相互作用に関する研究
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16F16313
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
久保田 賢一 関西大学, 総合情報学部, 教授 (80268325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SIDDIQUEE MUHAMMAD 関西大学, 総合情報学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2018-03-31
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Keywords | 対話的コミュニケーション / 社会文化的アプローチ / 相互作用 / 問題解決能力 / 多声的エスノグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,日本とバングラデシュの学校教育における教室での教師-生徒,生徒-生徒の間の相互作用について分析し,教育改善のモデルを構築することを目的とする.伝統的な教育では,教師が中心となり授業を進めるためにモノローグ的なコミュニケーションになりがちだが,生徒中心の教育では教師と生徒の対話,生徒同士の対話が学習効果を高める上で重要となる.子どもの問題解決能力を育てるには,対話的なコミュニケーションを増やし,自ら発言する力を伸ばすことが大切であるが,コミュニケーションの仕方は社会文化的な背景を考慮した調査が必要となる.そこで,日本とバングラデシュの教室での活動をビデオに収録し,教室談話を日本とバングラデシュの教師や研究者によって分析を加える.多声的エスノグラフィーの手法を用い,文化的な背景の異なる人たちの多声を重ね合わせることで,社会文化的な視点から教室談話を描写する. 28年度は,次の手順で研究を行った. 1)日本の学校を訪問し,授業の様子をビデオ収録する.とくに先進的な授業を実践している学校を訪問し,参与観察をすると共にビデオ収録を行う. 2)バングラデシュにおいても同様の方法で,小学校の理科の授業を収録した. 3)日本とバングラデシュの理科の授業を録画したものに,英語のテロップをつけている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年10月に来日したので,最初の1ヶ月は研究環境を整えることから始めた.机,パソコン,ネット接続,書籍など研究に必要な機材や道具を整えるとともに,質的研究に必要なソフトウェアに習熟するために,いくつかのソフトを試験的に操作したりして見た.研究内容は,日本とバングラデシュの理科の授業の比較をするために,まず,10月から12月の間,関西地区の小学校を訪問し,20の理科の授業を観察し,ビデオ録画を行った.2017年1月から2月の間は,バングラデシュで,小学校における20の理科の授業を日本で行ったものと同様にビデオ収録した. 日本とバングラデシュの教師からのコメントを得るために,収集した40本のビデオに英語のテロップをつける作業を行っている.理科授業のビデオ分析も同時進行で行っている.日本の授業では,子どもに考えさせるために予想をさせたり,予想の根拠を発表させたりすることが多く,子どもたちに自ら考えるように促す活動が多く取り入れられているのがわかった.一方,バングラデシュの授業では,教師が生徒に質問する場面は多く見られるが,質問の内容は教科書に書かれている内容の確認をするものが多く,子どもたちは一斉に声をそろえて回答する.現在,分析は進行中であり,さらなる分析を進めていく.
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Strategy for Future Research Activity |
まだ,授業談話にテロップをつける作業が終了していないため,それを継続して行う.次に,テロップのついたビデオ映像を視聴しながら,質的分析を行う.質的分析は,映像にコードを張り,授業がどのように組織化されているか明らかにしていく.分析した結果は,国際学会,国内学会を始め,様々な場所で発表していく予定である.二国の授業を比較することで,これまで当たり前であったものが見えるようになり,意識的に授業をとらえるきっかけとなることが期待される.教員研修の教材として,教師が自らの授業を振り返り,自ら違いを見つけ出し,改善につなげるための教材として,研究成果を活かしていく予定である.
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