2017 Fiscal Year Annual Research Report
産業排水に含まれる非鉄金属及び有機物の生物を利用した処理法の有効性の検討
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16F16750
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
浅枝 隆 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40134332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
AMIRNIA SHAHRAM 埼玉大学, 理工学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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Keywords | ファイトレメディエーション / 金属除去 / シャジクモ / 炭酸カルシウム / ヒ素 / マンガン / 炭酸水素イオン / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物を用いた重金属除去、ファイトレメディエーションは、安価で持続的に水中から重金属イオンを除去する方法として、極めて効率的な方法である。しかし、この方法を実用化するにあたっては、植物体中に重金属がどのように取り込まれているのか、また、どのようにすればより効率的に除去できるか等多くの課題を抱えている。本研究では、こうした観点から課題に取り組んだ。研究では沈水植物としては、シャジクモを対象とした。なお、シャジクモはカルシウムイオンの濃度が高い中では、二酸化濃度が減少すると、炭酸水素イオンを利用して、水中のカルシウムイオンを吸着、細胞周囲に、効率的に炭酸カルシウムを沈着させる植物であり、極めて高い可能性を秘めた植物である。シャジクモを、カルシウム、マンガン及びヒ素濃度を変えた培養液で実験を行った。その結果、以下のような点が明らかになった。1)走査型電子顕微鏡を用いた観察で、細胞表面に酸化マンガンの藤壺型の塊が形成され、この中にヒ素が取り込まれていることが明らかになった。2)炭酸カルシムに取り込まれた形で存在するヒ素、有機物に吸着するヒ素の量を比較すると前者の方が圧倒的に多いことがわかった。なお、後者は有機物の分解と共に水中に再回帰することから、前者の方が好ましい形態である。3)ところが、酸化マンガンに吸着されたものは、極めて多く、マンガンイオンの増加と共に、50%を超える濃度にまで高まることが示された。この機構としては、酸化マンガンにより3価のヒ素が5価に酸化される過程で取り込まれる可能性が高いことが示された。これらの結果よりカルシウムイオンのみでは、ヒ素の取り込み量は限られるものの、マンガンを加えることで、効率を圧倒的に高めることが可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シャジクモは二酸化炭素が欠乏すると水中の炭酸水素イオンとカルシウムイオンを利用して、炭酸カルシウムを沈殿させ、その際に水中に溶けている、重金属、リン等を取り込むことから、水質浄化に極めて重要な役割を果たすことはよく知られて事実であるが、その際に、炭酸カルシウム中に、重金属がどのように取り込まれているかについては必ずしも十分に明らかになっていたわけではない。本研究では、ヒ素に対し実験を行い、炭酸カルシウムの形成のみでは、ヒ素の多くはシャジクモ本体の有機物に結合した形になっており、有機物の分解と共に水中に再回帰する可能性を孕む結果となった。ところが、電子顕微鏡による観察を行ったところ、マンガンが存在することで、細胞表面に藤壺型の酸化マンガンの沈殿が形成されることを発見、しかも、ここに大量のヒ素が含まれていた。こうしたことから、マンガンを加えると、酸化マンガン中に取り込まれているヒ素量は、水中に加えたマンガンの濃度と共に増加、沈殿の50%にも達する値となった。マンガン自体は、濃度が高くなると必ずしも安全な元素とはいえないという点はあるものの、自然界に普通に存在する元素であり、重要な結果であるといえる。さらに、マンガンもヒ素も細胞外に沈着していることを考えると、今後の解明は必要ではあるものの、クロロフィル蛍光を用いた最大量子効率の測定では、細胞自体の活性に大きな影響を与えているとは考えにくい結果であった。目的に応じた利用法が考えられる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
植生を用いてファイトレメディエーションによって有害金属を除去する場合、有害金属が植物体にも影響を及ぼすことから、植物自体に十分な耐性がある必要がある。本研究の結果では、ヒ素を取り込んだマンガンの沈着は細胞外に形成されること、クロロフィル蛍光を用いた最大量子効率の分析(Fv/FM)では、Fv/FMの値はある程度の値に留まっていたことから、それほど大きな影響があるとはいえない結果にはなってはいない。しかし、実用化を考えた場合には、この検討は重要な課題である。最大量子効率は、光合成の過程で光化学系IIにおいて吸収される光エネルギーのうち実際の光合成に利用される割合に相当する。ところが、これだけでは、必ずしも光化学系の光エネルギー吸収阻害の機構を反映したものになっていない。実際には、活性酸素の生成による光化学系を構成するタンパク質破壊等に結び付けた解析が必要である。こうしたことから、異なる光強度で培養したサンプルにおける活性酸素生成量を測定することで、この影響を見積もることが必要と考える。具体的には、まず、他の条件は極めて良好な状態で、光強度を変えて、培養、測定可能な活性酸素として過酸化水素量を測定、光強度と過酸化水素量との関係(負の関係)を求める。次に、カルシウムイオン、マンガンイオン、ヒ素を含む培養液中で培養した場合の過酸化水素量を測定する。これらを比較することで、炭酸カルシム沈着、酸化マンガン沈着、さらに、ヒ素が含まれた場合の影響(ストレス強度)の評価を行う。
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