Research Abstract |
天然由来の生物活性物質の構造や機能には,時として我々の想像をはるかに超える斬新なものが見られる.本研究ではフィールドにおけるダイナミックな生物現象に着目した物質探索を行うことで画期的な新分子を発見し,物質探索の新機軸を打ち出すことを目指した. 共生,寄生現象に関与する物質探索では,無節サンゴモ抽出物に含まれるサンゴ幼生変態誘引物質として11-deoxyfistularin-3を単離した一本化合物は僅か10^<-7> Mで活性を示した.またサンゴモに含まれるfucoxanthinなどカロテノイドを添加することで,変態誘引活性がさらに増強されることも判った. 食物連鎖ダイナミズムに着目した物質探索では,ヒラムシの共生藻由来のポリオール化合物シンビオジノライド(分子量2,859)およびアカボシツバメガイの共生藻由来のデュリンスキオール(分子量2,128)をそれぞれ単離し,構造決定に成功した.さらに,腔腸動物イワスナギンチャクの共生藻より分子量約5,100と世界最大の新規超炭素鎖有機分子を単離することに成功した. 天然毒の研究に関しては,カリウドバチの一種ベッコウバチの麻痺性物質を同定し,遺伝子クローニングに成功した.リコンビナント実験による組換えタンパク質の調製を行い,実際に麻痺活性を確認した.毒性の作用機序解明を目指し研究を進めている.またカモノハシ毒についても豪州の研究者,動物園関係者と協力し,毒液のサンプル採取に成功した. また,カワラタケより単離した環状ペプチド,テルナチンが強力な脂肪細胞の分化抑制活性を示すことを見いだした.固相合成法を用いて化合物を供給し,構造活性相関についても知見を得た. さらに,代表的な新物質について詳細な薬理活性評価試験を実施した.テルナチンには種々のサイトカイン(IFN-g, TNF-a, IL-2,IL-4,IL-5)に対する有意な産生阻害活性が見られた.また共生藻由来のカラテュンギオールが強力な抗菌・抗カビ活'性生を示すことを見いだした.
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