2016 Fiscal Year Annual Research Report
映画フィルムの長期保存のための環境調査―劣化フィルムから発生する汚染ガスの測定―
Project/Area Number |
16H00004
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Research Institution | 株式会社IMAGICAウェスト |
Principal Investigator |
松尾 好洋 株式会社IMAGICAウェスト, 映像事業部, 映画フィルム復元技術者
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 映画保存 / 文化財保存 / フィルム保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
映画フィルムは適切な環境下で保存する100年以上の耐久性があるが、劣悪な環境では数年で加水分解が始まり加速的に劣化が進む。適切な環境とは温度や湿度が管理され、フィルムに影響を与える有害ガスが存在しない状態である。さらに、映画フィルムの場合は基材である硝酸セルロースや酢酸セルロース自体が劣化によって有害ガスを発するため、それらを低濃度に維持管理する必要がある。しかし、映画保存の分野では温度や湿度の管理は行われていても、有害ガスの対策は十分ではないのが現状である。本研究は保存環境中の有害ガス濃度を測定し、映画フィルムの長期保存に適した環境整備のための基盤づくりを行うことが目的である。 調査は映画フィルムを保存する博物館・美術館、研究機関等を対象として、各保存庫において温度、湿度、有害ガスを測定した。本研究により、国内の映画フィルム保存機関6箇所と海外の機関2箇所の計8機関の保存庫について調査を実施することができた。調査後は「環境測定結果」を作成し、各機関へ報告した。報告内容は測定結果とともに、環境改善のための提案を行った。 公的な保存機関では有害ガスの濃度が検知下限以下、もしくは極めて低濃度であり、専用の空調設備による効果が高いことが分かった。一方、専用設備のない機関においては文化財保存推奨値(東京国立博物館空気汚染物質濃度指針50ppb)の100倍を超える高濃度のガスが滞留しているケースもあった。このような機関は保存のための環境整備に十分な費用を確保することが困難であるため、フィルムケース内にガス吸着剤を用いるなど、環境整備よりフィルム個々の保護を行うことを提案した。 本研究により保存環境を明らかにし、機関の情勢に沿った環境改善を提案することで映画フィルムを長期保存する環境整備に繋がることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)