2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H00029
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古賀 康士 九州大学, 記録資料館, 助教
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 貨幣 / 銭座 / 経営 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的 近世日本の銭貨は、庶民の日常的な貨幣として社会・経済的に重要や歴史的役割を果したことで知られる。研究史においても銭貨鋳造の制度・技術に関して豊富な蓄積があるほか、藩札と並ぶ小額貨幣として18世紀以降の小農の商品生産を促進し、列島社会の経済変動における歴史的意義が強調された。 だが、その歴史的役割の大きさに比べ、近世の銭貨の生産と流通についてはなお未解明の点が少なくない。生産に関しては、寛永通宝発行以後、各地で設立された「銭座」と呼ばれる経営組織が鋳銭を担ったが、この生産体制の全体像は史料的制約により明らかではない。また流通に関しても列島レベルのマクロな動きは閑却されてきた。 研究方法 こうした問題点を踏まえ、本研究では次の分析課題に取り組んだ。 (1)銭貨につき未確認の史実を多く含む海外史料(オランダ東インド会社史料)の調査分析。 (2)「銭座」体制を解明するため、銭座史料と関係文献の網羅的な収集・分析。 (3)18世紀の列島社会における銭貨の広域的流通と経済変動の関係性の解明。 研究成果 第1の課題については、オランダ東インド会社史料の調査を行い、関係史料などの撮影・複写を実施した。体系的な分析にはなお調査が必要な段階だが、課題解明のための基礎的な土台を固められた。 第2の課題については、長崎の鋳銭史料を中心に調査を進めた。具体的には、初村家史料(大村市立史料館寄託)に残された関係史料を調査・分析した。本研究では、銅座や俵物といった関係史料にまで対象を拡げたため、期間内での成果発表は叶わなかったが、長崎鋳銭の全体像解明に布石を打てた。 第3の課題については、天草の豪商石本家の経営帳簿群の調査を行った(九州大学所蔵)。これにより銭貨の保蔵形態や広域的な銭貨流通が明らかになるなど、基礎的調査を完了できた。 また本研究に関係して、国際研究集会で報告を行い、海外の貨幣史研究者と意見交換を実施した。
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Research Products
(1 results)