2016 Fiscal Year Annual Research Report
熊用木製罠復元による製作技術の記録と展示用資材としての保存
Project/Area Number |
16H00034
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Research Institution | 東北歴史博物館 |
Principal Investigator |
村上 一馬 東北歴史博物館, 企画部企画班, 主任研究員
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 熊用大型木製罠 / 伝統的狩猟具 / 地域適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
○研究目的 本研究の目的は熊用大型木製罠の復元を行い、その過程を記録し、博物館での展示用の実物資料として保存することである。かつて東北地方の各地で猟師(マタギ)がこれを製作し、熊を捕獲していた。この木製罠はオツソやヒラと表記され、17世紀半ば以降に東北諸藩では狼や熊の捕獲に使用されてきた。300年以上の歴史がある伝統的狩猟具であるが、昭和30年代から使用されなくなり、その製作経験者が東北全域で数人にまで減少している。近年中に復元できなくなる可能性が極めて高く、この伝統的狩猟具の製作技術の記録と実物資料の保存を目指した。 ○研究方法 山形県小国町小玉川および秋田県北秋田市阿仁の2ヶ所で熊用大型木製罠の製作経験のある旧猟師が罠を旧来と同じ材料と製作方法で原寸大に復元した。その復元の模様を写真、動画で記録し、復元した罠を計測後に解体して東北歴史博物館へ移送した。その費用として罠材料費、復元人件費、映像記録委託費などが必要とされたが、交付額を大幅に超過するため、不足分として文化庁の補助金(文化芸術振興費補助金、地域の核となる美術館・歴史博物館支援事業)を充当した。これによって①旧猟師による熊捕獲用大型木製罠の復元、②復元過程の写真および動画撮影と動画編集、③復元罠の解体および搬送を行った。現在、罠部材は東北歴史博物館において乾燥処理をしており、展示に向けて準備を進めている。 ○研究成果 小玉川および阿仁で復元した熊捕獲用大型木製罠は同じくヒラオトシと呼ばれ、その基本原理は類似するが、細部には異同が認められた。具体的は両者ともにイカダに乗せた重しを落下させて熊を圧殺する仕掛けであるが、その起動はヒモを引くタイプと枝を踏むタイプに分かれる。また、重しに石礫または朽ち木を使用し、結束材に小木(シバキ)またはブドウ蔓を使用するなどの違いが認められた。これらは罠の設置場所近くで調達されるものであり、使用部材は地域適応が明瞭であることも判明した。
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Research Products
(1 results)