2016 Fiscal Year Annual Research Report
船と河海の民俗文化-民俗地理学写真のデジタルアーカイブ化
Project/Area Number |
16H00036
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Research Institution | 有限会社・アシスト |
Principal Investigator |
出口 正登 有限会社・アシスト, 写真家
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 写真アーカイブ / 木造船 / 文化財保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、学術資料としての写真記録の優位性に着眼し、記録者自らが民俗地理学写真のデジタルアーカイブ化をはかる実践的研究と基盤整備の検討に取り組んだ。まず船と河海の民俗文化について30年にわたる軌跡と現状を時系列で把握するため、若狭湾、琵琶湖、北陸・信州、関東、瀬戸内等で現地調査し、写真記録にとどめた。木造船が減少・消滅し、在来船を用いた生業活動が衰微していく事態はおおむね予測しえたが、その速度や現れ方は場所によって異なっていた。千葉県手賀沼や印旛沼など関東地方では古い木造船を新たに発見し、従来存在しないと思われた箇所にも予想以上に多くの事例が確認できた。他方、愛知県渥美半島では博物館展示の古い木造船模型が建物の建て替え以降消失していた。実船でも元の場所から移動する事態を複数の地域で確認した。以上のような現地調査から同一地域の時系列に沿った写真記録とテーマに沿った広範エリアの写真記録双方の重要性が喚起され、それらをふまえ、写真アーカイブの構築方法を検討した。 本研究中、これまで長年調査してきた若狭湾の木造船トモウチが、地元所有者の意向により富山県氷見市の博物館に保存されることになり、その橋渡しと搬送までの写真記録を実施した。博物館における民俗資料の保存は、モノの収集に加え、背景にある民俗文化の学術情報をいかに残せるかが鍵を握る。そのため本研究では、モノの保存と学術情報の有機的なつながりを構築する写真アーカイブを優先課題と位置づけた。モノとコンテキストをつなぎ、過去から現在の時間と空間を可視化するには、ウェブやDVD等デジタル画像を中心とした発表方法が有効となる。成果の一部はすでにウェブマガジンやホームページ等で発表している。さらに現在平行して進める神奈川大学国際常民文化研究機構の共同研究とも結びつけ、DVDによる写真アーカイブのモデルとなる成果をえることができた。
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Research Products
(4 results)