Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】 教科書では, 生命科学分野に関わる実験として, DNA抽出実験やPCR法, 電気泳動法等の内容が扱われているが, これらの実験(特にPCR法や電気泳動法)は, 機器類が高額であるため, ほとんどの高等学校の授業で実施することができていない。また, DNA抽出実験やPCR法, 電気泳動法の内容は教科書に単独で掲載されており, これらの方法の繋がりや関連性がつかみにくい状況にある。そこで, 本研究ではDNAを扱った各実験方法の関連性が把握できる安価な実験教材を開発することを目的とした。 【研究方法】 サーマルサイクラーを使用せず, 授業1時間(50分)で終えることのできる「安価な手動PCR法」の開発を行った。その後, 葉緑体DNAの存在する部位について調査することをテーマに, ネギ(緑色部位と白色部位)を材料に, 簡易DNA抽出実験(50分), 安価な手動PCR実験(50分), 自作簡易電気泳動装置を用いた電気泳動実験(50分)の順に授業実践を行った。すべての実験終了後に質問紙調査を行い, DNAを扱った各実験方法の関連性が把握できたか確認を行った。 【研究成果】 ロウソク, ガスバーナー, ビーカー, 温度計等の身近なものを使用し, 実験班ごとに「温度維持係り」, 「サイクル係り」, 「タイム係り」, 「サイクルカウント係り」の役割を決めることでサーマルサイクラーを使用しない「安価な手動PCR法」を開発することができた。そして, 簡易DNA抽出実験, 安価な手動PCR実験, 自作簡易電気泳動装置を用いた電気泳動実験の順番に授業実践を行った。その結果, 目的DNAの増幅を確認でき, 生徒実験として適切に実施できることがわかった。さらに, 質問紙調査の結果から, 実験前にDNA抽出実験, PCR実験, 電気泳動実験の繋がりを正しく理解していた生徒は13.6%であったが, 実験後には81.8%まで増加した。以上より, 本研究では, DNAを扱った各実験方法の関連性を把握できる安価な実験教材を開発することができた。
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