2016 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害児を対象とした格助詞学習教材の開発と研究-格助詞誤用の特徴をふまえて-
Project/Area Number |
16H00265
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
坂口 嘉菜 筑波大学, 附属聴覚特別支援学校, 教諭
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 聴覚障害 / 格助詞 / デジタルコンテンツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では聴覚障害児が格助詞を理解し、正しく使うことができるようになるための学習教材を開発し、その教材を用いた実践を通してその教材の効果について検討することを目的とした。 まず、格助詞の使用が困難である構文(受動態・使役態・授受表現)を中心に、聴覚障害児の格助詞の誤用の特徴について明らかにするとともに、指導場面で得られた発言から格助詞の理解の仕方について特徴を探ることとした。それぞれの構文について空欄補充式の問題を作成し、イラストの状況に合わせて空欄にあてはまる助詞を3名の対象児(14~15歳)に答えてもらった。結果、受動態では全ての対象児が材料を表す構文(大豆から豆腐( )作られる等)で誤ることが示された。振り返りの際には「文を最後まで見ていなかった」等の記述が見られた。「れる・られる」の言葉を意識させ、動作の方向性を確認することで助詞の選択の正答率が上がることが示唆された。使役態では一部の生徒が「させる」の意味を知らないと発言し、日常的に使用していないことが示唆された。アニメーション教材を活用ずることで、誰が行為を強制し、誰が動作主であるのかを視覚的に学習する様子が見受けられた。また、抽象的な内容を表す使役態においては全ての対象児が助詞の選択を誤ることが示された。授受表現では全ての対象児が「もらう・あげる・くれる」の意味を曖昧に理解していることが示された。そこで、ボタンを押すごとに「誰が」「誰に」「何を」「どうしてくれた」という順序で文章が表示されていくアニメーション教材を作成し、問題を解いたあとの解説場面に表示されるよう、デジタルコンテンツを作成した。ある生徒はこの教材がとても分かりやすいと発言し、授業時間外もパソコンを操作して教材を利用する様子が見受けられた。イラストに語順が示され、利益を受けるものと動作主が視覚的に分かりやすいアニメーション教材が効果的であることが示唆された。また、助詞の選択肢の下に、その助詞を入れた場合の文を読み上げるボタンをつけたところ、文を最後まで読む様子が見受けられた。文全体を読み上げる教材により、文全体の韻律(リズム)をどの程度意識できるようになるのか等も含め、対象児を増やしながら今後も継続して検討する必要がある。
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Research Products
(1 results)