2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H00283
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川田 泰之 早稲田大学, 高等学院, 教諭
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 風俗犯 / IR推進法 / 公営ギャンブル |
Outline of Annual Research Achievements |
少なくとも戦後のわが国において、賭博罪のみを議論の対象とする刑法解釈論のモノグラフィは見当たらない。賭博罪を射程に収める文献として、川端博『風俗犯論』(成文堂、2010年)を認めることができる程度である。そこで、刑事政策的な観点から賭博罪について論じている文献、およびドイツの賭博罪に関する議論を参照して、賭博罪の保護法益(処罰根拠)について検討を加えた。また、研究成果が机上の空論にとどまることがないように、積極的にIR誘致活動を行っている北海道庁を訪問して、担当者からヒアリングを実施した。IRの候補地である留寿都村および苫小牧市も訪問して、資料収集や写真撮影を行った。 研究成果をまとめると、次の通りである。すなわち、公営ギャンブルが存在している以上、賭博罪の保護法益を風俗・財産・健康と解することはできない。賭博は風俗・財産・健康を害すると国家がいうならば、国家(に準じる団体)が賭博を主催することは背理となるからである。保護法益を国家のコントロール権、あるいは組織犯罪の抑止と解することもできない。国家的なコントロールによって何を保護しているのか、組織犯罪から何を保護しているのかという、具体的な保護の客体が明らかでないからである。保護法益を詐欺賭博や付随的犯罪の抑止と解することもできない。詐欺賭博の抑止は少なくとも一次的には詐欺罪の任務であるように、いずれの犯罪もそれに対応する固有の構成要件によって抑止されるべきだからである。公営ギャンブルを財源獲得ツールとして運営している現状からすると、矛盾が生じない保護法益は「国家の財政・徴税権」である。国家財政を危殆化しない少額を賭すにとどまる賭事は、刑法185条但書に該当するから、賭博罪を構成しない。
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Research Products
(1 results)