Outline of Annual Research Achievements |
1. 研究の目的 子どもが素朴概念・誤概念を持っていることはよく知られているが, 小学校理科物理分野においては, これらを定量的に調査・分析し, 授業評価・改善に役立てる方法は確立されていない。本研究はその開発を目的とする。 2. 研究の方法 前年度S小学校第6学年児童を対象に物理概念予備調査を2回実施したが, 今年度はその分析から始めた。第1次調査は力と運動(N=37), 電気と磁石(N=37), 物の性質(N=37)という具合に, 学級毎に別問題で実施し, 多肢選択方式による定量的調査と回答理由記述による定性的調査を併用した。第2次調査は, これらを統合し, 多肢選択方式で実施した(N=74)が, 分析に限界が生じ, 追跡調査も兼ねて, 同校児童が多数進学するS中学校第1学年生徒(N=150)を対象に第3次調査を実施した。 分析は第2次調査を中心に項目特性図を作成して行い, 児童を総点により概ね同人数の5群に分け, グラフの横軸に群, 縦軸に選択率を表した。グラフから回答傾向や識別力を検討し, 記述式回答から偽正答・偽誤答についての検討を加え問題を改良した。特に, てこの支点に関する素朴概念は根強く, 選択肢や図を何度も修正した。こうして力と運動, 電気と磁石の2種類の調査問題を完成させ, 第5学年「電流の働き」, 第6学年「てこの規則性」「電気の利用」のプレーポストテストとして実施した。 3. 研究の成果 「てこの規則性」を中心に分析を行い, 規格化ゲインを求め, 授業評価・改善の検討材料とした。教科書程度の問題では, 0.24~0.58のゲイン(問6~問8)が得られたが, 他事象に適用する問題は正答率の変化は小さかった。授業は基礎・基本の定着に一定の効果があったが, 規則性の他事象への適用に課題があることが明らかになった。力と運動の調査は, 中学生に対しても実施したが, てこの支点についての素朴概念は, あまり改善されないことが分かった。 以上の内容について, 論文1本投稿査読中。2本投稿予定。
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