2016 Fiscal Year Annual Research Report
睡眠薬摂取歴の証明に資する毛髪中薬物分析の高度化に関する研究
Project/Area Number |
16H00312
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Research Institution | 大阪府警察本部 刑事部 科学捜査研究所 |
Principal Investigator |
志摩 典明 大阪府警察本部 刑事部 科学捜査研究所, 主任研究員
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 睡眠薬 / 毛髪 / 質量分析装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
分析試料の1つとして挙げられる毛髪は、被害申告が遅れたケースでは薬物検出が可能な唯一の試料であるほか、摂取時期の証明にも有用な試料である。これまでに、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI-MS)によるイメージング分析を行い、毛髪中から睡眠薬ゾルピデムを検出し、その画像化に成功している。高感度液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析(LC-MS/MS)による定量結果と併せて、以下のような知見を見出していた。 1. 薬剤摂取(単回摂取)24時間後において、ゾルピデムは毛根全域(皮下部分約4~5mm)に渡って分布する。また、濃度のピークが2箇所(毛球部位と頭皮近接部位)で観察されたことから、毛髪への取り込み経路は少なくとも2箇所あることが示唆された。 2. 毛球からの薬剤の取込みは摂取後2週間程度続くことが示唆され、摂取後2週間における薬剤の分布幅は、単回摂取にもかかわらず約10mmにまで拡張する。なお、濃度のピークは変わらず2箇所観察される。 本研究では、摂取後1ヶ月以降の毛髪中薬物の挙動を観察し、摂取時期特定の精度について検討した。その結果、ゾルピデム単回摂取後2週間に観察された濃度のピークは, 摂取後1~3ヶ月においても変わらずに2箇所観察され、摂取歴の証明(摂取時期の特定、単回/複数回摂取の識別)に活用できることが示唆された。また、毛髪中薬物濃度の顕著な変化は認められず、シャンプーや紫外線による薬物の脱落や分解は少ないものと考えられた。摂取後6ヶ月および1年については現在検討中である。 摂取時期の特定については、摂取後1ヶ月以降になると誤差は大きくなるものの、1~2週間程度の精度で可能であると示唆された。 本研究で得られた毛髪中薬物挙動は、摂取歴証明のための貴重な知見になるものと考えられる。
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Research Products
(1 results)