2016 Fiscal Year Annual Research Report
ベレムナイト化石から探る手取層群の堆積開始時期と海洋古生物地理
Project/Area Number |
16H00325
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Research Institution | 福井県立恐竜博物館 |
Principal Investigator |
佐野 晋一 福井県立恐竜博物館, 主任研究員
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 手取層群 / 前期白亜紀 / ボレアル区 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ベレムナイトの分類学的検討に基づき、手取層群の開始時期や当時の古生物地理の解明を目的とする。岐阜県荘川地域の御手洗層産ベレムナイト標本に関して、鞘の外形、及び軟X線写真撮影装置を用いた内部構造の観察、シベリアや北部カリフォルニア産標本との比較を行い、次の成果を得た。1)御手洗層からCylindroteuthis klamathonaeやC. lenaensisに類似した新種と、Arctoteuthis tehamaensisの2種の産出を確認した。2)御手洗層の時代論には議論があるが、C. klamathonaeは北部カリフォルニアのBerriasianから、C. lenaensisはシベリアのTithonianから記載された種で、また属としての最も若い産出記録は前期Valanginianであること、A. tehamaensisは北部カリフォルニアとシベリアにおいてBerriasian最下部を特徴づける種とされることから、ベレムナイトのデータはBerriasian説を支持する。なお、御手洗層の下位の牛丸層の時代はジュラ紀末の可能性も考えられ、この場合、手取層群の堆積開始は白亜紀最初期ではなくジュラ紀末にさかのぼることになる。3)CylindroteuthisとArctoteuthisはボレアル区を中心に分布しており、手取地域と北部カリフォルニアからの産出は、北太平洋の両岸において、ボレアル要素が中緯度域にまで進出したイベントの存在を示す。一方、ボレアル要素の二枚貝Buchiaは北部カリフォルニアには多産するものの、北西太平洋地域では南沿海州を南限とし、手取地域からの産出は知られていない。御手洗層産アンモノイドがテチスー太平洋要素から構成されることを考え合わせると、手取地域は当時テチス区とボレアル区の移行帯付近に位置していたと考えられる。
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Research Products
(3 results)