2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H00328
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Research Institution | 文部科学省初等中等教育局 |
Principal Investigator |
川辺 文久 文部科学省初等中等教育局, 教科書調査官
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 化石 / 個体変異 / 成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の生活や進化の最小単位は個体群である。しかし、中等教育において実感を伴った個体群の学習が展開されているとは言い難い。本研究では大学1~2年を対象に、高校卒業レベルの数学力で対応できる解析を通して、個体変異と成長に関わる教育プログラムの開発・実践を試みた。統計ソフトに頼らずに、すべて電卓計算で行うこととした。 まず、貝類や腕足動物化石の集団標本の観察から、それぞれ殼形態に個体変異があることを定性的に実感させた。その上で、千葉県北部から産出する第四紀二枚貝化石の定量的な解析を行った : (1)N>40で、ノギスを用いて殼の長さと幅を計測し、散布図(普通目盛と両対数目盛)に示す。相対成長式を求めて、等成長(プロポーションが一定)か不等成長(プロポーションが変化)かを判断する。等成長とみなせるものについて、殼の長さと幅の比について(2)平均値と標準偏差の算出、ヒストグラムの作成を行う。(3)サンプルが正規分布する母集団を反映しているのかを客観的に判断するために、カイ二乗検定を行う。 アンモナイトの殼体には個体発生の全ての過程が記録されている。材料は北海道産デスモセラスとし、母石から化石を剖出した後、正中断面試料を50個体作成した。正中断面標本を実体顕微鏡で観察し殼体のつくりを理解した上で、試料の中心部に見える孵化時の殼体サイズ(1mm前後)を計測した。このデータを使って、上記(2)、(3)の解析を行った。 化石試料を用いる利点として、腐敗のリスクがないので繰り返し試料を使えること、非日常的な試料を扱うことで知的好奇心が喚起されること、現生生物学も古生物学も生命現象を探究する分野であって基本概念を共有していること、が挙げられる。本課題のテーマは「生物」、材料は「地学」、手法は「数学」である。今回開発したプログラムによって自然の探究には教科・科目の間に垣根がないことを実感できると期待される。
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Research Products
(2 results)