2016 Fiscal Year Annual Research Report
微小領域の弾性変形を考慮した高硬度材(サファイア)のナノメートルオーダー加工
Project/Area Number |
16H00333
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
春日 博 国立研究開発法人理化学研究所, 大森素形材工学研究室, テクニカルスタッフⅠ
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | サファイア / 微細溝加工 / 切削抵抗 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工的に結晶成長させたサファイア(Al_2O_3)は、押し込み硬さがきわめて硬く、切削や研削が困難な材料の1つである。これまでに得られた結果では、ダイヤモンド工具を用いて切り込み深さを0.5μm未満にした場合、表面が非常に滑らかな延性モードで材料を除去できる加工条件があることが確認された。しかし、工具刃先の先端半径は20~40nmであり、どのようにnmオーダーの平滑な表面が形づくられたのか、新たな疑問が生じた。 本研究では、微小領域の材料特性に手がかりがあると考えた。サファイアのような硬い材料も、深さ100nm未満の領域では、荷重によって表面がゴムのように弾性変形する。従来は加工する材料を変形しない剛体として扱っていたが、微小領域では材料表面が変形することを考慮し、刃先先端が数十nmの工具を用いても、nmオーダー深さの加工が可能であるかを検証した。実験では、刃先の先端半径が30nmの工具を用いて、切り込み深さを徐々に増加させる溝加工を行った。ただし、加工中の切り込み深さをnmオーダーで検知することは困難なため、切削抵抗と加工後の溝深を測定し、両者の関連を求めた。 実験の結果、切削抵抗(背分力)が1N以下の領域では、刃先の先端半径よりも浅い溝が形成されており、背分力0.5N以下の領域では、深さ10nm以下の極めて浅い溝が形成されていることがわかった(工具送り速度 : 10mm/min)。 これは、刃先先端が数十nmの工具を用いても、一桁下のnmオーダー領域での溝加工が可能であることを示している。言い換えれば、刃先先端がnmオーダーの鋭さを持っていない場合でも、深さ10nm以下の溝加工は可能であることを示している。この結果、微細な溝を組み合わせてnmオーダーの幾何学模様(ナノテクスチャ)を作製することが可能になった。
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Research Products
(1 results)