Outline of Annual Research Achievements |
下水処理場の最終沈殿池における溶存態亜酸化窒素(DN_2O)の生成メカニズムを解明するため, 秋田県の流域下水道である大曲処理センターを対象とした水質調査を行った. なお亜酸化窒素(N_20)は二酸化炭素の約300倍温室効果能を持つ温室効果ガスであり, オゾン層破壊物質でもある. 調査は2016年7月と11月に行った. 下水処理場内の調査地点は流入原水, 最初沈殿池流出水, 反応槽(3箇所), 最終沈殿池表層, 消毒槽流出水とし, 水サンプルの採取を行った. また, 11月調査では最終沈殿池の低層からも水サンプルを採取した. なお, 最終沈殿池は円柱型で底部がすり鉢状になっており, 水深が約3mある. 採取した水サンプルからDN_2O, NH_4-N, NO_2-N, NO_3-N, COD_<cr>濃度などを測定し, 調査現場でDO, 水温, pHなどをセンサーを使用して直接測定した. その結果, 反応槽におけるDN_2O濃度は, 7月が1.10~1.67μg/L, 11月が3.19~715μg/Lであったのに対し, 最終沈殿池のDN_2O濃度は7月が0.94μg/L, 11月が表層で542μg/L, 低層で1440μg/Lであった. また, 7月は反応槽から最終沈殿池にかけてNH_4-N濃度の変化がほとんど見られなかったのに対して, 11月は反応槽平均濃度が6.21mg/L, 最終沈殿池低層が4.46mg/Lと, 1.75mg/L減少した. このことから, 11月は最終沈殿池に流入したアンモニウムイオンが汚泥の沈降とともに硝化脱窒反応を起こし, その反応過程でDN_2Oが生成されたと考えられる. 以上より, 下水処理場の最終沈殿池では汚泥の沈降とともに硝化脱窒反応が進むことでDN_2Oが生成され, 反応槽よりもDN_2Oが高濃度になる可能性が示唆された. また, その生成量は季節変動による水処理状況の変化によって異なると考えられる.
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