2016 Fiscal Year Annual Research Report
室内生理実験から導かれた種子発芽調節モデルは野外生態系で機能しているか
Project/Area Number |
16H00437
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
青山 のぞみ 福井県立大学生物資源学部, 生物資源学部, プロジェクト研究員
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | ハコベ種子 / NCED / DOG1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、室内生理実験から得られた種子高温発芽阻害モデルが、野生植物を対象とした野外生態系で機能しているかどうかを検証することである。 本研究で用いた野生植物は、同属近縁種の越年草ミドリハコベと一越年草コハコベである。前者の種子は秋だけに発芽し、冬は2次休眠状態となる。後者の種子は通年発芽して冬に2次休眠とならない。種子高温発芽阻害モデルは、越年草の種子が高温の夏期間は発芽阻害され、秋に発芽可能な温度反応状態となる生態現象を、種子中のアブシジン酸(ABA)生合成鍵酵素NCED遺伝子とABA代謝鍵酵素CYP707A遺伝子が、それぞれ高温と適温で発現上昇することで生じると説明するものである。さらに最近、DOG1遺伝子発現による越年草の種子2休眠誘導モデルが示された。 そこでミドリハコベとコハコベの種子を5月の採種後に埋土し、6~11月に掘り上げて、遺伝子発現、アブシジン酸内生量、発芽温度反応を調査した。種子中の遺伝子発現レベルは、コハコベではどの時期でも、NCED、CYP707A、DOG1のいずれも低く、ミドリハコベでは、NCEDは6~9月、CYP707Aは9月、DOG1は11月に特異的に高かった。また種子のABA内生量は、コハコベではどの時期でも低いが、ミドリハコベでは、6~8月は高く、9月以降は低くなった。このABA内生量の低下時期は、両種の種子が土壌中で発芽可能な温度域にある時期と一致していた。 これらの結果から、ミドリハコベの種子が、高温発芽阻害期間はNCED、秋発芽期間はCYP707A、2次休眠誘導期間はDOG1によって制御されていることが明らかである。一方、コハコベはこれらの遺伝子制御を受けないために通年発芽するものと考えられる。以上から、種子の高温発芽阻害および二次休眠誘導の生理モデルが、冬生植物の野外発芽生態系で機能していると結論される。
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