2016 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋諸島の「ガ媒花」の受粉戦略~野外調査と化学分析からのアプローチ~
Project/Area Number |
16H00439
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小林 五月 山形大学, 理学部, 技術員
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | パラオ諸島 / GC-MS / 送粉動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
パラオ諸島は海洋生物で有名だが、海洋島であるため陸上植物にも固有種が存在し、その中には形態的特徴からガ類が送粉昆虫と考えられるものがある。しかし昆虫相が極めて貧弱で、特にこれらの植物の送粉昆虫となり得る大型のガ類がほとんどいない。そこで本研究では、送粉動物の直接観察と花香成分の分析によって、パラオ諸島の固有種を含む自生種の送粉動物を明らかにすると共に、海洋島に展開した植物がいかにこの厳しい環境に適応してきたのかを解明する一助になると考えた。 事前にパラオ共和国及び国内6州の植物採取許可を取得し、現地での観察及び花香成分の採集は平成28年10月17日から22日の6日間で行った。なお、採取予定であったMorinda latibracteataとFagraea berter oanaの2種は、期間中に開花した植物を発見出来なかったため、固有種3種を含む自生種5種の調査を行った。直接観察では、可能な限り訪花昆虫を捕獲した。花香成分の採集に用いたヘッドスペース法は、山岡(1992)を参考に実施した。 直接観察の結果、Fagraea ksidの訪花昆虫としてコハナバチとハリナシバチを、Morinda pedunculataの訪花昆虫としてアシナガバチとハリナシバチを、Morinda citrifoliaの訪花昆虫としてハキリバチとミツバチを、それぞれ確認した。これら3種(固有種2種を含む)では、訪花昆虫が送粉昆虫の役割を果たしている可能性がある。一方、Bikkia palauensisとBadusa palauensisでは、調査期間中に訪花昆虫が観察されなかった。調査した全5種について、合計14サンプルの花香成分を得た。現在はそれらを解析中であり、その結果を既知のガ媒花の花香成分と比較することで、パラオ固有種の送粉動物が推定され、動物相の乏しい海洋島に展開した植物の受粉戦略の解明につながると期待できる。解析後の成果は、今後学会発表や論文等で公表する。
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