2016 Fiscal Year Annual Research Report
福祉的手法を用いた霊長類の行動強化に影響する要因の分析
Project/Area Number |
16H00476
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 直子 京都大学, 霊長類研究所, 技術職員
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 動物福祉 / 正の強化トレーニング / 霊長類 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】飼育動物における福祉向上をめざした正の強化トレーニング(Positive Reinforcement Training 以下, PRT)は, 日常の健康管理や実験場面において動物の自発的協力が得られるため多くの利益があると知られている。一方で, PRTへの従事や進捗には個体差も少なからずみられ時間的コストが懸念されている。環境や実験に順応しにくい個体が選ばれ研究に携わることは福祉レベルの低下を招き非効率的である。本研究では, 一定期間におけるPRTの進捗状況を行動学的手法にもとづき調査し, それぞれ動物種(ニホンザル, コモンマーモセット), 性別, 年齢, 飼育環境, 生育歴や個体の経験, 社会的順位, PRT補助用装置の有無といった変数で比較することにより, 効率的なPRTと関連する要因を模索することを目的とした。 【研究方法】対象動物は, 群飼育されている, ニホンザル(Macaca fuscata fuscata)ならびにコモンマーモセット(Callithrix jacchus)とした。PRT従事時間は1個体あたり1セッション2~5分程度で目標とした行動(手渡し給餌, 姿勢保持, 標的物への接触など)の段階的な強化をおこなった。一次強化子としてドライフルーツ, 落花生, ならびにオリゴ糖溶液を用いた。PRT補助用装置は, ニホンザル用は幅50cm高さ50cm長さ100cmのトンネル状で透明塩化ビニル板とステンレスメッシュ, マーモセット用は幅30cm高さ15cm奥行15cmの箱型でコンテナとステンレスメッシュをそれぞれ用いて作製したもので, 群飼育環境においても対象個体の自発的な協力で1個体ずつ隔離してPRTに従事できる構造とした。行動記録には直接目視観察およびビデオ録画を用い, PRTによる各個体の進捗状況の点数化とPRT従事前後の群の攻撃的交渉頻度による福祉的評価をおこなった。 【研究成果】いずれの種においてもPRT補助装置への馴化と手渡し給餌の進捗は大きなばらつきがなかったが, 滞在時間やPRTの進捗には群内の社会的順位の影響が示唆された。また, PRTの実施による群内の社会的安定性への潜在的な影響について今後の検討課題となった。
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Research Products
(1 results)