2016 Fiscal Year Annual Research Report
新生児マウスを用いる動物実験が母マウスにもたらすストレスの生化学的評価
Project/Area Number |
16H00479
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
矢田 範夫 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 母子分離 / コルチコステロン / ストレス評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景および目的】動物実験を行なう上で, 繁殖・系統維持の際に虚弱個体の排除のために出生直後に産仔の一部を安楽死させることがある. また離乳前の個体を実験に用いる場合もある. ところが実験動物の苦痛の基準では母親の側からみた苦痛評価は見当たらない. そこで哺育中の産仔を離す際の母親の苦痛について, ストレスマーカーであるコルチコステロン(CORT)に着目し, 苦痛の程度を客観的に評価することを立案した. 【方法】ICR系統のマウスを用いた. 出産させた産仔を生後3日目の時点で, 母親から①産仔の半数を離す群, ②すべての産仔を離す群, ③すべての産仔を残す群の3群(各群母親マウス5匹)に分け, 仔を離す1時間前と1時間後に母親の尾静脈から各0.1mL採血し, 終了後ケージに戻す. ストレスの経時的変化を検討するために, 24時間後に再度尾静脈から0.1mL採血を行う. これらをサンプルとして酵素免疫抗体法によってCORTの測定を行う. これらの操作を生後10日目, 生後21日目(離乳時)の時点でも行なう. 【結果および考察】本研究においては、n数も少なく、安静時の血中CORT濃度も個体によってばらつきが大きいなど、母マウスのストレスの程度を厳密に定量することまではできなかった。また仔を離されるストレス以外に採血手技自体がストレス要因となる可能性も無視することはできない。 しかしながら、本研究で得られた非常に限られた結果の中でも、母マウスから仔を離す前と比較してその1時間後の血中CORT濃度は傾向的に増加を示すこと、1時間後に仔を母マウスのもとに戻して23時間後には傾向的に低減することが示された。これは仔を引き離すことが母マウスにとってストレスとなることを示唆している。今後は実験動物の苦痛・ストレスの生化学的評価という方法論をさらに確立し、倫理的な実験動物の取り扱いに寄与する情報を提供していきたい。
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Research Products
(2 results)