2016 Fiscal Year Annual Research Report
イトラコナゾールによるワルファリン代謝阻害の機構解析
Project/Area Number |
16H00491
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
橋本 麻衣子 信州大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | イトラコナゾール / ワルファリン / 代謝阻害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ワルファリン代謝に対するイトラコナゾール(ICZ)の阻害作用とその機構を明らかにすることを目的としたものである。実験はヒト肝ミクロゾーム(HLMs)および組換え酵素(rCYP2C9)を用いたin vitroの系で実施し、S-ワルファリン7-水酸化酵素活性に対するICZとその代謝物であるヒドロキシICZ、ケトICZおよびN-デスアルキルICZの阻害効果を検討した。 HLMsを用いた場合、ICZ、ヒドロキシICZ、ケトICZおよびN-デスアルキルICZはそれぞれ2.5、16、2.5、5μMまではS-ワルファリン代謝活性を濃度依存的に阻害したが、それ以上の濃度では阻害に濃度依存性を認めなかった。阻害剤濃度が1μMのときの阻害率の強さはICZ、ケトICZ、N-デスアルキルICZ、ヒドロキシICZの順であり、その強さは各々35.4%、26.5%、7.8%、4.5%であった。 rCYP2C9を用いた場合、ICZ、ヒドロキシICZ、ケトICZおよびN-デスアルキルICZはそれぞれ1、10、2.5、5μMまではS-ワルファリン代謝活性を濃度依存的に阻害したが、それ以上の濃度では阻害に濃度依存性を認めなかった。阻害剤濃度が1μMのときの阻害率の強さは、ICZ、ケトICZ、N-デスアルキルICZ、ヒドロキシICZの順であり、その強さは各々48.6%、28.7%、15.7%、11.9%であった。 HLMsおよびrCYP2C9を用いて阻害の速度論的解析を行った結果、ICZ、ヒドロキシICZおよびケトICZは非競合型の阻害様式を示したが、N-デスアルキルICZは混合型の阻害様式を示した。HLMsに対するKi値はICZ、ケトICZ、N-デスアルキルICZ、ヒドロキシICZの順に低く、各々1.64、2.87μM、6.40μM、8.52μMであった。また、rCYP2C9に対するK_1値はICZ、N-デスアルキルICZ、ケトICZ、ヒドロキシICZの順に低く、各々2.56μM、3.58μM、4.36μM、14.2μMであった。 以上の結果から、CYP2C9が触媒するS-ワルファリン7-水酸化反応はICZによって最も強く阻害されるが、代謝物であるヒドロキシICZ、ケトICZおよびN-デスアルキルICZによっても阻害されることが明らかとなった。現在、各々の作用機序について詳細に検討中である。
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