2016 Fiscal Year Annual Research Report
肺移植においてバシリキシマブ投与がタクロリムス血中濃度および腎機能に与える影響
Project/Area Number |
16H00515
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
川西 秀明 岡山大学病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 肺移植 / バシリキシマブ / タクロリムス |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】 バシリキシマブは腎移植における急性拒絶反応の抑制に対し適応を持つ薬剤であり、免疫抑制剤であるカルシニューリンインヒビターを減量しながら急性拒絶反応の予防が可能であるといわれている。しかしながら、肺移植におけるバシリキシマブの使用はその症例が少ないことから有効性や有害事象に関する報告はほとんどない。カルシニューリニンヒビターの有害事象として腎機能障害が知られているが、バシリキシマブ投与によりカルシニューリンインヒビターの血中濃度を低く維持することができれば肺移植後の腎機能障害を軽減できる可能性がある。本研究では、バシリキシマブ投与により急性拒絶反応や感染症のリスクを上げることなくカルシニューリンインヒビターの血中濃度を低く保ち、さらに腎機能障害を軽減することができるか検討を行った。 【研究方法】 平成21年1月から平成27年12月に当院にて肺移植手術を受け、カルシニューリンインヒビターとしてタクロリムスを投与された患者を対象とした。対象をバシリキシマブ投与群と非投与群に分け、バシリキシマブ投与前後の腎機能、タクロリムスの血中濃度、急性拒絶反応の発症リスクおよび感染症のリスクについてレトロスペクティブに検討を行った。 【研究結果】 肺移植後8週までのタクロリムスの平均血中濃度はバシリキシマブ投与群で有意に低い結果となった。術後8週のクレアチニン値はバシリキシマブ非投与群において有意な上昇が認められた。急性拒絶反応、サイトメガロウイルス感染およびアスペルギルス感染は両群に有意差は認められなかった。これらの結果より、肺移植において、バシリキシマブ投与は感染症および急性拒絶反応のリスクを上げることなくタクロリムスの血中濃度を低く保つことができることが明らかとなった。そして、タクロリムスの血中濃度を低く維持できることが腎機能障害のリスク軽減につながると考えられた。
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