2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H00520
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
中野 貴文 福岡大学病院, 医療技術職員
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 脳梗塞 / 血栓溶解療法適応マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
血栓溶解薬の組織プラスミノーゲンアクチベータ(Tissue plasminogen activator ; t-PA)は脳梗塞治療において, 後遺症を回避できる唯一の治療薬である, しかし, 脳梗塞病態が進行した状態で, t-PAを投与すると, t-PAの強力な血栓溶解作用により脳出血を誘発するリスクが高くなる. そのため, 発症時刻が不明な患者などt-PAを施行できない患者も多くいる. そのため, 本検討では, t-PA投与を支持するバイオマーカーを発見することを目的に行った. 基礎研究の成果より, 脳梗塞モデルマウスにおいて, 血管炎症の特異的マーカーのPentraxin3 (PTX3)が脳梗塞の進行と共に上昇することを明らかにした. 更にPTX3上昇時にt-PAを投与された脳梗塞モデルマウスは脳出血を誘発することが確認できた。以上のことから, PTX3は脳梗塞の進行度を反映し, t-PAの適応を判断するバイオマーカーの候補であることを確認した. また, 本研究はヒトの脳梗塞病態の進行具合や重症度をPTX3が反映することができるか検証をした. その結果, 脳梗塞発症から時間が経過するに従いPTX3の血中濃度が上昇すること, t-PA施行患者ではt-PA投与前の血中PTX3濃度が低値であることが明らかとなった(30症例程度)。また, 臨床現場において日常的に測定されているC-reactive protein (CRP)やInterleukin-6 (IL-6)といった炎症性マーカーと比べても, 鋭敏に反応することが明らかとなった. 以上より, PTX3はヒトの脳梗塞の進行度を反映するバイオマーカーになる可能性があることが示唆された. PTX3をt-PA適応マーカーとして確立するためには, 今後さらに症例数を追加して検討することと, 基礎研究によりPTX3と脳梗塞病態の関連性を明らかにしていく必要がある.
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