2016 Fiscal Year Annual Research Report
神経分化関連因子を誘導する神経精神疾患治療薬物の選定及び作用メカニズムの解明
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16H00526
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北川 佳奈子 名古屋大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | NPAS4 / GABA |
Outline of Annual Research Achievements |
○研究目的 精神疾患の原因はストレス等の環境的要因が関与しており、治療法は十分確立されていない。我々は精神的及び身体的ストレスを負荷したマウスで空間学習記憶や情動行動の異常が起こる(Behav. Brain. Res., 2009)と共にGABA神経系発達に関与する転写因子ヒトNeuronal Per Arnt Sim(PAS)Domein Protein 4(NPAS4)の発現が海馬や皮質で顕著に低下していることを見出した(J. Neurochem., 2010)。また長期的なストレス負荷によりNPAS4プロモーターのDNAメチル化が亢進しNPAS4の転写が抑制されることも見出した(NeuroReport, 2015)。以上より、脳のホメオスタシスを維持する要のNPAS4はストレス応答性に発現が抑制される転写因子であることが明らかになった。従って、ストレスによるNPAS4の発現減少は、GABA作動性神経系の機能異常を引き起こし、精神疾患発症に至ると考えられる。本研究では、NPAS4の発現を誘導する化合物を探索し、NPAS4及びその下流因子をターゲットとする新規精神疾患治療薬の開発を目的とする。 ○研究方法 (1)NPAS4を誘導する化合物の探索と解析 : ヒトNPAS4プロモーターを組み込んだ神経細胞株に候補化合物を添加し、プロモーターアッセイを行い、NPAS4誘導に有効な化合物を絞り込んだ。 (2)NPAS4関連転写因子を誘導する化合物の作用メカニズムの解明 : (1)で見出した候補化合物によるNPAS4プロモーター活性誘導に関する細胞内シグナル伝達機構について追究した。 ○研究成果 我々は候補化合物を(1)の細胞培養系に添加し、プロモーターアッセイを行い、既知の化合物ライブラリーからNPAS4誘導に有効な化合物を数種類絞り込んだ。現在、これらの候補化合物によるNPAS4プロモーター活性誘導に関する細胞内シグナル伝達機構について追究を行っている。本研究はヒトの治療に応用することを目標とするため、今後in vivoにおいても、候補物質の絞り込み、シグナル伝達機構の解明を行う予定であり、精神疾患発症の分子標的療法の確立を目指す。
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