2016 Fiscal Year Annual Research Report
体組成成分を考慮した抗がん剤投与量補正式の確立に向けて
Project/Area Number |
16H00528
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤野 泰孝 名古屋大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | 体組成 / 頭頸部癌 / 化学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在のがん治療では、身長と体重から算出した体表面積を利用し、抗がん剤の投与量を決定している。しかし、体表面積からでは、個々の体格を考慮できないため、るい痩患者、肥満患者、体液貯留を有する患者では、抗がん剤を過少または過量投与によって有効薬物血中濃度範囲外で治療されている可能性がある。一方で、近年、精度の高い体成分分析機器である生体バイオインピーダンス法(BIA法)が普及してきている。BIA法であるInBody720(インボディ社)は非侵襲的に体水分量や体脂肪量、除脂肪体重、骨格筋量などを簡易に測定できる機器である。当院耳鼻咽喉科病棟にもInBody720が設置されており、実臨床で手術前後や化学療法施行患者の体組成変動を評価する際に使用している。 まず先行研究として、頭頸部癌化学療法施行患者を対象とした後ろ向き臨床研究を行った。シスプラチン+5-FU療法(CF療法)もしくはシスプラチン+5-FU+アービタックス療法(ECF療法)を施行し、なおかつInBodyにて体組成測定を行っている患者を対象とした。2013年4月から2016年7月までの間に対象症例は21例であった。化学療法前の細胞外水分比(ECW/TBW)は化学療法後の好中球数最低値と有意な負の相関性を認めた(p=0.00416)。好中球減少Grade0、1とGrade2の2群で化学療法前のECW/TBWをMann-Whitney-U検定で比較したところ、Grade2群でECW/TBWが有意に高かった(p=0.006)。好中球減少Grade2以上のECW/TBWのカットオフ値を調べるため、ROC曲線を引いたところ、0.393となった。InBodyでのECW/TBWの基準値は0.390未満であり、ECW/TBW0.390未満と0.390以上の2群で化学療法後の好中球数をMann-Whitney-U検定で比較したところ、0.390以上の群で優位に好中球数が低かった(p=0.029)。さらにこの2群で好中球減少症のGradeをFisherの正確検定にて比較したところ、有意なばらつきを認めた(p=0.012)。ECW/TBWはCF療法、ECF療法の好中球減少を予測する因子となることが示唆された。研究助成金にてシスプラチン、5-FU測定用のLC/MS/MSのカラム等を準備できたため、今後前向き研究として抗がん剤血中濃度を測定し、ECW/TBWなどの体組成成分との相関性を確認し、抗がん剤投与量補正式の確立を目指す。体組成から血中濃度の測定が可能となれば、体表面積投与よりも安全かつ有効に抗がん剤を投与することが可能となるかもしれない。
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