2016 Fiscal Year Annual Research Report
Time in Therapeutic Rangeによる免疫抑制剤濃度管理の可能性検証
Project/Area Number |
16H00571
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
折山 豊仁 東京大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | カルシニューリン阻害薬 / TTR / 血中濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
造血幹細胞移植時のカルシニューリン阻害薬(CNI)の血中濃度管理は移植片対宿主病(GVHD)発症予防や副作用回避の観点から重要である。CNIであるシクロスポリン(CYA)やタクロリムス(TCR)の治療濃度域については文献により多少の差はあるものの、ある程度の目標範囲が提唱されているが、CNIは薬物動態の個人差が大きく、完全に治療濃度域内に血中濃度をコントロールすることは極めて困難である。そのため、移植後のどの時期にどの程度の治療濃度域逸脱が臨床的に許容され、あるいは許容されないのかはCNIの血中濃度管理を行う上で重要な問題であるが、このような観点に基づく検討はほとんど報告が無く、適切な評価指標を用いた研究が必要と考えられた。また、CNIの濃度管理には薬剤師の関与が求められているが、薬剤師による処方設計支援が血中濃度管理に及ぼす効果を定量的に評価した報告は限られている。 一方で、CNIと同様に継続的な投与量調節が必要なワルファリンカリウムについて、その臨床効果と副作用は国際標準化プロトロンビン時間(PT-INR)が至適範囲に入っている期間の割合(Time in Therapeutic Range ; TTR)に依存し、TTRが高いほど脳卒中や出血リスクが軽減することが近年報告された。TTRは原理的には目標域が設定された全ての測定値に対して適用可能であり、CNIであるCYAおよびTCRのTTRが、ワルファリンカリウム同様に有効性や副作用発現を予測する適切なバイオマーカーとなり得るか調査し、TTRを指標としたCNIの新しい血中濃度管理の可能性および、薬剤師による処方設計支援が血中濃度管理に及ぼす効果を検証することを目的に本研究を実施した 本研究による結果として、薬剤師が医師による初訪設計の支援を行うことで、移植後Day 0~7のTTRは薬剤師介入群で有意に高く(TCR : 71.7% vs 54.8%、P<0.05、CYA : 49.5% vs 35.2%、P<0.05)、Day 0~生着までのTTRにも同様の傾向が認められた。さらに、CYAによる腎障害発現を低下させる傾向が見られることが明らかとなった。これらの結果から、薬剤師による処方設計支援は免疫抑制剤の血中濃度管理を適正化する上で有用であると考えられた。今後は、TTRとGVHD発症との関連性の解析を進めていく予定である。
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Research Products
(1 results)