2016 Fiscal Year Annual Research Report
ホルマリン代替液によるサージカルトレーニング用臨床解剖体固定液の開発
Project/Area Number |
16H00613
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
清水 秀美 北海道大学, 大学院医学研究科, 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | ホルマリン代替液 / サージカルトレーニング用臨床解剖体 / 親水性高分子モノマー |
Outline of Annual Research Achievements |
チール法と呼ばれる遺体防腐処置により、遺体を硬化させず長期保存できる固定法により臨床解剖として使用しているが、この方法はホルマリン(以下 : FA)を大量に使用するため、実務者はFA暴露から逃れられないのが大きなデメリットである。そこで、N-ビニールー2-ピロリドン(以下NVP)がFAの代替となるのではないかと思案され、NVPを主成分とした代替固定液用い、FAを完全に除去した改良チール法の開発を試みた。手法として、FA濃度を従来の4%から0%の各段階の溶液とし、代替として0%から20%のNVPを添加した種々の固定液を作成し、臨床解剖へと提供した。固定された遺体は1ケ月ほど保管し、毎月腐敗の有無・カビの発生など保存状況を確認したところ、5体中1体に3ヶ月ごろからカビの発生が確認された。固定後、皮膚表面の色合いなど外表観察並びに臓器の剖出観察を行い、臓器自体の外観や柔軟性を観察、従来のFA固定解剖体と比較検討したところ、特別な問題は確認されなかった。各臨床分野によりサージカルトレーニングを実施したところ、肺・食道など胸部臓器には生体に近い柔軟性と色合いが保たれ最良の状態が保たれていた。腹部臓器においては胃、消化管も最良の状態で保たれていたが、膵臓の融解が著しく不適当と思われる遺体もあった。脳外科においては、脳組織の軟化が著しく不適であった。整形外科領域では、筋肉や関節の可動性が非常によく、最良であった。また、ホルマリン濃度測定では0.1ppm以下と適した作業環境であった。結果①ホルマリン代替としてNVP使用が可能であり作業環境の改善が見られた。②固定した遺体は1~3ヶ月程度の保存は可能であるが、半年以上の保存ではカビの発生により不適当である。③腹部・胸部内臓における臨床解剖では問題なく行えた。④脳組織の軟化が強く脳外科領域には不適であり、ホルマリン等による脳組織硬化作業が必要である。⑤筋肉・関節の柔軟性には最良の結果が得られた。⑥臨床解剖では、臨床医や医療スタッフ、医療機器の準備等により1~2ヶ月かかることがあり、長期化するほど皮膚表面の乾燥やカビの発生が強くなる傾向があり長期の作業には不向きであった。以上を踏まえ、遺体の固定から臨床解剖まで短期間で行う必要性があり、脳組織や膵臓など軟化しやすい臓器には不適当であるため、臨床解剖の目的に応じた遺体固定処置を組み合わせる必要性があると思われた。
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