2016 Fiscal Year Annual Research Report
眼球運動から神経疾患を診断し、症状進行を予測する研究
Project/Area Number |
16H00634
|
Research Institution | マツダ(株) 技術研究所 |
Principal Investigator |
渡邊 雅之 マツダ(株) 技術研究所, 会社員
|
Project Period (FY) |
2016
|
Keywords | 眼球運動 / 神経疾患 / 臨床診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
「目はロほどにモノを言う」ということわざの通り、様々な精神・神経疾患によって眼球運動に異常が生じる。本研究の目的は、この眼球運動の異常パターンを特定し、神経疾患の客観的な診断や、症状進行を予測する技術の開発である。眼球運動は、(a)ある対象への注視、(b)別の対象への視線移動の準備、(c)視線の移動(サッカード)、という一連の制御が脳内で行われている。これまでの臨床研究では、計測が容易な(c)が主な対象であった。しかし、得られる情報が限定的であることや、患者間での症状のばらつきなどが影響して、矛盾した結果が多数報告されている。これに対し、申請者らは、視線を移動させる前に生じる無意識の微小な眼球運動(マイクロサッカード、瞳孔調整)から、視線移動の準備(b)が解読できる事を明らかにした(e. g., Watanabe et al. 2013)。この知見を元に、多発性硬化症の患者19名を対象として解析した結果、以下4点がわかってきた(投稿準備中) : ①随意的に視線を移動させる場合、健常被験者と比較して、サッカード開始(c)に長い時間がかかる。②注視開始(a)から視線移動準備(b)の際に生じるマイクロサッカードの頻度・振幅、及び瞳孔サイズの変化率が健常被験者より速い。③上記の変化率が、MSの全般的な障害程度(MS Severity Scale)と相関する。④マイクロサッカードの振幅がMSの認知障害(MoCA score)と相関する。以上より、眼球運動の異常パターンから、多発性硬化症の異なる症状を眼球運動から推定できる可能性が見えてきた。2017年度以降は、同様の解析を老化(健常者)、パーキンソン病、ハンチントン病等に展開していく。
|