Outline of Annual Research Achievements |
目的 : 本研究課題は, 高精細X線CT装置の解像度を利用して, 生体内で計測できる肺の硬さ・柔らかさの計測に関する基盤技術の構築を目的とした. 特に, 吸気と呼気の二時相を用いて画像が表す微細構造の変化を自動追跡し, 定量化する方法について検討を行った. 方法 : 本研究期間においては, 次の2つを実施した. (物理実験)水を含んだスポンジについて, その自然長時および伸展時で撮像を行った. スポンジは肺胞の構造を模倣しており, 構造の変化は柔らかさと関連すると仮定したためである. この物体を, 高精細X線CT装置と同程度の解像力がある単純X線装置を用いて, 自然長時と伸展時の2時相で撮像した. ブロックマッチング法において, 局所領域の追跡を行い, 画像変位を表す差分画像の作成を行った. (適用可能性の調査)肺の柔らかさが診断上重要となる疾患について, 胸部専門医, 放射線技師, 工学系研究者と議論を行った. その中で, 撮像範囲に存在する臓器の被ばくに関して, 患者個別の被ばく計測法の重要性が議論された. 成果 : ブロックマッチング法によって画像の局所的な変位を計測できることが明らかになった. 得られた変位ベクトルに基づいて, 移動した領域の質量をもとに変位するエネルギーを計算できるといえる. そして, 当初の計画通り物理的な変形モデルを用いて物体の硬さが表現できると結論付けた. また, GPUを用いた高速化も実現し, 別モダリティへの応用も進めた. それらの成果についても, 研究発表を積極的に行った. 画像の高精細化によってノイズや被ばくの増大が予想されるため, それら解析法についても本研究から派生して研究を実施した. 特に, 病変陰影の線成分解析について論文を投稿した. また, 個別被ばくの計測方法について, 共同研究者と特許出願を行った. 臨床症例に関しては, 装置の導入が遅れたため, 2017年4月現在も継続して実験を行っている.
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