2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H00676
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三島 由祐子 東京大学, 医学部附属病院, 臨床検査技師
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Project Period (FY) |
2016
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Keywords | スフィンゴシン1-リン酸(S1P) / ジヒドロスフィンゴシン1-リン酸 / アポリポ蛋白M(ApoM) |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的 : スフィンゴシン1-リン酸(S1P)は抗アポトーシス作用、細胞増殖作用、細胞遊走作用、血管透過性低下作用、血小板活性化など多彩な生物学的作用を引き起こすリゾリン脂質であることが知られている。S1Pの4位の炭素に二重結合を持たない構造をしているジヒドロスフィンゴシン1-リン酸(DH-S1P)はS1P同様にS1P受容体を活性化するといわれているが、その詳しい働きや動態はまだ知られていない。本研究では、DH-S1Pにおける血漿中の分布、分解、産生についてS1Pとの類似点、相違点を明らかにし、その性質から、DH-S1Pの新しいバイオマーカーとしての可能性について検討した。 研究方法 : (1)DH-S1PとS1Pの輸送体の違いがあるかを検討するため、健常者の血漿中のリポ蛋白を超遠心法でLDL、HDL2、HDL3、VHDL、除リポ蛋白血漿(dp)に分離し、各分画のS1P、DH-S1P濃度を調べた。(2)S1Pはアポリポ蛋白M(ApoM)の存在下で分解が遅くなることが知られているが、DH-S1Pにも同様にこの保護作用がみられるか、HepG2細胞などを用いて確認した。(3)血漿S1Pの主要な産生源は、血小板、赤血球、血管内皮細胞と言われている。これらの細胞からのS1PとDH-S1Pの放出に相違があるか、血小板、赤血球、血管内皮細胞にC_<17>DH-S1P、C_<17>S1Pの前駆物質であるC_<17>スフィンゴシン(C_<17>-Sph)、C_<17>ジヒドロスフィンゴシン(C_<17>DH-Sph)を反応させ、上清、細胞内のC_<17>S1P、C_<17>DH-S1P濃度の変動を調べた。 研究成果 : (1)血漿検体において、S1PはHDL分画に多く分布したのに対し、DH-S1Pはdp分画に多く分布した。S1P濃度の高い血清検体においても、同様の傾向が確認できた。(2)S1Pで確認されたApoMの保護作用はDH-S1Pでは確認されず、DH-S1PがApoMを輸送体としない可能性が考えられた。(2)活性化血小板では高濃度のS1P, DH-S1Pが産生・放出された。赤血球でも血小板と同様に産生されたが、ほとんど放出しなかった。血管内皮細胞ではS1Pはわずかに放出が見られたが、DH-S1Pはほとんど見られなかった。よって、活性化血小板、赤血球、内皮細胞から産生されるS1Pと異なり、DH-S1Pは活性化血小板の産生の影響が大きいことが推察された。
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