Outline of Annual Research Achievements |
<目的>脳卒中患者の自動車運転支援に関する知見は蓄積されてきているが, 雨天の影響は十分に考慮されていない. また, 気象庁によると, 1981~2010年の過去30年間において石川県は全国で最も雨天日数が多いと報告されている. そのため, 石川県の地域特性をふまえると雨天の影響を評価することは大変重要であると思われる. 本研究の目的は, 脳卒中患者の運転支援において, 雨天を考慮した評価内容を模索することである. <方法>当院のリハビリ外来に通院中で自動車運転をしている脳卒中患者11名に対して, 自動車運転シミュレータ(DS7000R : 三菱プレシジョン株式会社)を使用し, 晴天と雨天時における模擬運転を15分ずつ実施した. その後, 半構造的面接を1人1回30分程度実施した. 面接の質問順序は, 対象者の属性に関する質問から始め, 次に「シミュレータを使用しての感想」, 「運転をしていて困ったこと」, 「運転を再開するにあたり, 入院中に練習しておいた方が良いこと」の順に行った. インタビューの内容は, 筆記とICレコーダー(OLMPUS, VoiceTrec, V-822)により録音した. データ分析はBerelson, Bの内容分析の手法を用いて分析した. 文脈単位は「運転をしていて困ったこと」, 「運転を再開するにあたり, 入院中に練習しておいた方が良いこと」を表す記述全体を文脈単位としてコード化した. また, 決定された文脈単位を繰り返し読み, 意味の区切れる単文を記録単位としてコード化した. カテゴリ分類は, 臨床経験10年目以上の作業療法士2名と検討し, カテゴリの一致率をFleiss's K係数を用いて算出した. なお算出の際はJustus RandolphのOnline Kappa Calculatorを使用した. 倫理的配慮として, 調査に先立ち, 当院の倫理審査の承認を得た上で, 症例には研究の目的と方法, とりやめの自由, 個人情報の保護についての書面を用いて説明し, 書面にて同意を得る方法で実施した(倫理承認年月日 : 2016年6月3日). <結果>運転を再開して困った事は, 68記録単位が抽出され, 【困難さ】【精神・心理的負担】の2コアカテゴリが形成された(K=0.76). 入院中に練習しておいた方が良いことは, 36記録単位が抽出され, 【シミュレータでの練習】【シミュレータ以外での練習】【なし】の3コアカテゴリが形成された(K=0.70). カテゴリ内の雨天に関連する項目として, 運転時のワイパー操作や駐車時の配慮, イメージ・体験の必要性などがきかれた. また, シミュレータを使用しての感想は, 操作性よりも注意訓練になる等の意見がきかれた. <考察・結論>今回の結果から雨天の評価内容として, 運転時のワイパー操作, 駐車場所の確認, 車からの乗り降り, 雨天走行の体験・イメージ付け, 改造に関する情報の項目を考慮する必要があると思われる. 今後, 症例数を重ね, 項目内容の妥当性を検証していく必要がある.
|