2018 Fiscal Year Annual Research Report
Cognitive neuroscience on human search behavior: Dynamic interaction of perception, memory and decision making
Project/Area Number |
16H01727
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋木 潤 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60283470)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
月浦 崇 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30344112)
野村 理朗 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (60399011)
上田 祥行 京都大学, こころの未来研究センター, 特定講師 (80582494)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 探索行動 / 視覚探索 / 記憶探索 / 意思決定 / 神経基盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)視覚探索に関する研究:日本人と北米人における視覚探索の文化差の研究成果を踏まえ、University of British Columbiaとの共同研究をさらに進めるとともに、新たな東アジア文化圏の拠点としてNational Taiwan Universityとも共同研究を行った。カナダとの共同研究では、先行課題による視覚探索特性の変容メカニズムの検討を継続した。台湾では、先行研究の日本人の視覚探索のパターンを追試するとともに、文字に関する視覚経験が探索行動の変容をもたらしている可能性が示唆された。視覚探索と記憶探索を比較する実験の結果、課題間の相関は見られず、両探索課題の意思決定プロセスはそれぞれ課題依存的である可能性が示唆された。視覚探索における報酬と注意に関する研究では、報酬学習が視覚探索における注意捕捉に影響を与える価値駆動的注意捕捉に関して、報酬学習が古典的条件づけによっていることを明らかにした。 (2)記憶探索に関する研究:自伝的記憶探索に関して,自伝的記憶における自己概念の抽象度によって変容する脳内機構についてのfMRI研究を実施した。視覚性ワーキングメモリにおける特徴統合が従来言われているよりも頑健であることを示した研究が国際誌に採択された。Hebb反復を用いた記憶の系列再生課題に関する研究から、位置情報の再生が時系列に依存することが明らかになり、この成果が国際誌に採択された。 (3)自己意識の探索に関する研究:瞑想に関して、瞑想実践者を対象とした集中瞑想・洞察瞑想時の脳活動を調べた研究が国際誌に採択された。また、そのメカニズムについて詳細に検討するために、短期の介入インストラクションの開発を行った。またtDCSを用いて機械学習を用いた刺激パラメータの設定により、マインドワンダリングを低減させる手法についての検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各研究項目に関して進捗状況を取りまとめる。 (1)視覚探索:探索行動の変容については、学習や経験によって探索行動が変容することが示されたが、短期的な経験による探索行動の変容については、カナダ及び台湾との共同研究からいくつかの興味深い知見を得ている。この課題については文化比較も含めて研究を継続する。さらに、報酬学習による探索行動の変容に関しても国際誌に論文として成果が発表された。当初計画の視覚探索と記憶探索の比較検討については、両課題の意思決定過程の領域依存性を示唆する知見を得ており、現在、この知見の一般性を確認する実験を行うとともに、成果の国際会議での発表、論文執筆の準備中である。 (2)記憶探索:自伝的記憶の探索に関するfMRI実験において,自伝的記憶における自己概念の抽象度の違いによって内側前頭前皮質,内側頭頂葉皮質,外側側頭葉皮質において脳活動の解離が同定された。また、視覚性ワーキングメモリに関する研究も成果が国際誌に発表されるなど、順調に進捗している。 (3)自己意識の探索:当初計画の瞑想に関する脳機能計測研究は国際誌に成果が発表された。さらに瞑想における短期介入、マインドワンダリングの低減手法の検討など新たなテーマに取り組んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)視覚探索研究:視覚探索の文化比較を中核とした探索行動の変容に関する研究については、今年度はこれまでの実験成果を取りまとめて論文化するとともに、実験論文だけではなく、視覚環境の経験による探索行動の変化に関する理論的なモデルを構築する。並行して、文化比較研究を発展させるために、長期経験による探索行動の変容について、文化に特有の視覚情報(文化特有の文字体系、風景)に接している経験が探索行動を変容させる可能性を検討する。短期的な経験による探索行動の変容について、日本人と北米人で同じ探索課題を行い、探索行動の変容メカニズムを検討する。視覚情報の抽出・表現の方法、探索ストラテジーのいずれが変容しているのかという問いと、文化間比較による長期的経験と短期的経験の交互作用の効果に焦点を当てる。視覚探索と意味記憶探索の比較研究は、データ収集を完了して成果を取りまとめて論文化するとともに、視覚探索と記憶探索を包括した探索の一般モデルの確立に向けて理論的な枠組みを提案する。 (2)記憶探索研究:自伝的記憶の探索に関して取得したfMRIデータについて,機能的ネットワーク解析やMVPA解析などのより高度な解析を実施することで,自伝的記憶における自己概念の抽象度の違いによって変化する脳内機構の詳細を明らかにする予定である。視覚性ワーキングメモリに関する研究については、これまでの知見を踏まえ、脳波測定を含む脳機能計測実験を行い、特徴統合や記憶情報の保持、変換過程を支える神経機構の解明も進める。 (3)自己意識の探索研究:瞑想における短期介入やマインドワンダリングの低減手法に関する研究をさらに発展させ、成果を取りまとめる。
|
Research Products
(23 results)