2016 Fiscal Year Annual Research Report
Is Mg ion a novel second messenger for regulating energy metabolism?
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16H01751
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡 浩太郎 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (10276412)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
チッテリオ ダニエル 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00458952)
舟橋 啓 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70324548)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生体生命情報学 / シグナル伝達 / 神経科学 / 細胞・組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) エネルギー代謝とMgイオンとの関係の解明 細胞内Mgイオン動態の解析とエネルギー代謝との関係解明をメタボロームと蛍光イメージングを併用して進めた。我々は細胞内Mgイオンがエネルギー代謝を制御するような特別な情報伝達物質ではないかと考えており、特にミトコンドリアでのMgイオンの恒常性の調節がエネルギー代謝に重要な関与をしているのではないかと考えている。我々はこれまでにミトコンドリア脱共役剤であるFCCPを細胞に加えると、ミトコンドリから大量のMgイオンが細胞質に放出されることを明らかにし、ミトコンドリアは細胞内の主要なMgイオンストアであることを示した。本年度は特にミトコンドリアの主要なMgイオン輸送体であるMrs2に着目してエネルギー代謝との関係を調べた。この輸送体をノックダウンすると、細胞内ATP濃度は減少し、その際にエネルギー代謝とミトコンドリア形態が大きく変化することを見出した。さらにこの細胞では種々の細胞ストレスに対する耐性が低下していることを明らかにした。 (2) ミトコンドリ機能に擾乱を与える技術の開発 本課題ではエネルギー代謝とMgイオンとの関係を明らかにすることを目指しており、そのためにはエネルギー代謝に即時的に擾乱を与える技術が必要となる。そこでミトコンドリアのタンパク質を特異的にアセチル化する新規な化学物質tributylphosphine (PBu3)の創生とそれによるミトコンドリア機能の改変を行った。PBu3の添加と除去により、ミトコンドリア断片化を可逆的に誘導することができた。このことは、PBu3はミトコンドリ機能解析ツールとして利用できることを示しており、今後この過程とMgイオンとの関係を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたようなMgイオンとエネルギー代謝との関係を明らかにすることは順調に進行しており、特に本年度はメタボローム解析と蛍光イメージングを併用することにより、ATP産生とミトコンドリアMgイオンとの関係を明らかにすることに成功した。一方でレシオメトリックに細胞内Mgイオン濃度を計測する新規低分子プローブの開発とケイジドMgの開発は遅れているものの、蛍光タンパク質を利用した細胞内局所でのMgイオン濃度を計測する新規な手法の開発に成功した。これにより蛍光タンパク質を利用するものの最終的にはレシオメトリックにMgイオン濃度を計測することができるようになり、さらには小胞体や核などの細胞局所でのMgイオン濃度計測も可能となったため、遅れは十分に取り返すことができたと考えている。またミトコンドリア機能を可逆的に改変可能な新規物質を見出すことにも成功しており、Mgイオン動態とミトコンドリア機能を平行して調べることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
新規なMgプローブの開発と細胞内Mgイオン濃度に擾乱を与える技術については、有機低分子プローブに拘ることなく可能な手法の開発を引き続き進める。また一方で「Mgイオンがセカンドメッセンジャーである。」ことを証明できるような適当なモデル実験系をさらに探索する予定であり、具体的には神経細胞発生初期でエネルギー要求性が高い時期の神経機能とMgイオンとの関係を、既存の情報伝達系と対比させて明らかにするための研究を進めることを計画している。このためには多数の細胞からシグナル伝達とMgイオン濃度との関係を細胞内で明らかにする必要があるが、従来の蛍光イメージング手法とは一線を画す新規な技術のアイディアを試す予定である。また併せて細胞周期とMgイオンとの関係などについても同様なアイディアを利用することが期待できる。 またメタボロームの手法では細胞内での経時的なエネルギー代謝変化の様子を秒単位の分解能で調べることは困難である。そこで乳酸濃度やピルビン酸濃度、そしてATP産生を同時にイメージングすること(予備的な検討はすでに進めている)を試み、細胞内Mgイオン濃度変化とエネルギー代謝との関係を直接対応付ける技術の開発を進める。
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Research Products
(8 results)