2019 Fiscal Year Annual Research Report
心理職の活動を拡げるインターネット版認知行動療法の開発とプログラム評価
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16H02056
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下山 晴彦 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (60167450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅沼 慎一郎 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 人文社会科学群, 講師 (60756451)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 認知行動療法 / インターネット版認知行動療法 / ココロ・ストレッチ / うつ病 / アクション・リサーチ / サービスギャップ / メンタルヘルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、利用者が認知行動療法にアクセスしやすいように制作したインターネット版認知行動療法を実装し、心の健康の予防・促進に関する効果研究を行うことを目的としている。令和1年度は、前年度に改定した「ココロ・ストレッチ」を産業場面でを実践し、その効果を検証するプログラム評価研究を行うことを具体的な目標としていた。令和1年4月に開始したプロセスで利用者の不安反応が強く示された。そこで「ココロ・ストレッチ」の内容を大幅に改定し、改めて心理職の再教育をした上で令和2年1月よりアクションリサーチを再実施した。 このように本研究では、アクション・リサーチをする中で重要な修正点が見つかった。具体的には、利用者が「ココロ・ストレッチ」を構成する、最初のプログラムにおいてうつ病という文言、そしてうつ病に関連する記述を読むことで不安になり、実施を見送るということが頻発した。利用者への聞き取り調査等の質的研究によって、その原因は、多くの若手社員が会社の期待に応えられずにメンタル不調を経験することへの不安が強く、それがこのようなプログラムを受けることへの恐怖感にあることが明らかになった。 これは、研究デザインの不備ではなく、むしろ、アクション・リサーチによって若手社員においてうつ病に関する強い不安感が存在していることを明らかにした意義があった。メンタルヘルスにおけるサービスギャップに関しては、サービスへのアクセスに問題があると仮定し、それを改善するためにオンラインで認知行動療法を提供するシステムを作成し、実施した。その結果、サービスギャップは、アクセスの問題というよりも、利用者におけるうつ病への不安があることが明らかとなった。この発見は、サービスギャップを改善するための重要な発見といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和1年4月にアクション・リサーチのデザインを確定し、6月にガイド心理職の教育をした上で7月から8月にかけて産業領域のフィールドとして航空会社の若手社員を対象としたアクション・リサーチを実施した。その際、若手社員全員が参加する初期研修会でアクション・リサーチの説明をし、プログラムへの参加を要請した。ただし、ほぼ9割の社員は、「ココロ・ストレッチ」を構成する、最初のプログラムにおいてうつ病という文言、そしてうつ病に関連する記述を読むことで不安になり、実施を見送る、あるいは中断した。 そこで、プログラムの順番を修正するとともに、うつ病に関する内容と表現を改定し、心の健康チェックとのためのプログラムに変更した。修正箇所は、プログラムの中核箇所であったので、改定においては予想外の遅れが生じた。また、改定された内容に基づいて利用者のガイドをする心理職の再教育が必要となり、そのための遅れも生じた。 さらに、同年3月新型コロナウィルス感染症拡大に伴い、研究協力者の確保が難しくなり、緊急事態宣言も出されたために、実施方法を見直しをせざるを得なくなった。これも予想外の遅れの原因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
アクション・リサーチの過程で利用者が「ココロ・ストレッチ」を構成する、最初のプログラムにおいてうつ病という文言、そしてうつ病に関連する記述を読むことで不安になり、実施を見送るということが頻発した。これは、産業領域のメンタルヘルスのサービスギャップは、サービスへのアクセス困難を原因として起こるのではなく、むしろ自分自身がメンタル不調になることに対する強い不安感を要因としていることが推測された。さらに、面接調査データの質的分析からは、会社への期待を応えることを重視するあまり、うつ病などのメンタル不調になることを恐れ、自己のメンタルヘルス状態をモニタリングすることができなくなっていることも明らかになった。 この結果は、本研究のテーマと密接に関わるサービスギャップの要因についての重要な発見であった。そこで、この発見を軸としてココロ・ストレッチとガイド心理職の教育プログラムの改定だけでなく、研究のデザインそのものを改定する必要も見えてきた。 この段階で見出された若手社員のメンタル不調への恐怖は、病気へのスティグマというよりも、会社への強い忠誠心があるために、会社の期待に応えられずにメンタル不調になることへの不安と密接に関わっていることも示唆された。そこで、ココロ・ストレッチの実施とデータの分析においては、社員のモニタリング機能の推進を重視する方針とした。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Robotic utterance style to promote conversation with elderly people in Japan2019
Author(s)
Hirano, M., Ogura, K., Sakamoto, D., Nakano, M., Tsuchida, T., Iwano, Y. & Shimoyama,H.
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Journal Title
Gerontechnology
Volume: 18(2)
Pages: 89-96
Peer Reviewed
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[Book] 臨床心理学入門2019
Author(s)
下山晴彦(編訳者)
Total Pages
226
Publisher
東京大学出版会
ISBN
978-4-13-012115-6
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