2017 Fiscal Year Annual Research Report
Projecting discharge from the Greenland ice sheet using climatic forcings derived from atmosphere-ocean models
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16H02224
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
Greve Ralf 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (90374644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 慎 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20421951)
阿部 彩子 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (30272537)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 氷床 / 力学 / 気候変動 / 数値モデル / グリーンランド |
Outline of Annual Research Achievements |
最新のグリーンランド基盤標高モデル、氷床底面水文モデル、さらに改良された氷流動力学モデルをSICOPOLISに導入した(Calov+ 2018)。改良後のモデルを使用して、グリーンランド氷床のスピンアップ実験を行った。この実験では、氷コアの解析結果を現在の観測データに適用して構築した、過去の氷床表面温度と降水量を条件として与えている。北東グリーンランド氷流の流動状態はこれまでよりも良く再現されたが、さらなる改善の努力が必要である。 ISMIP6コミュニティーと協力して、2016年度に実施した氷床モデル比較プロジェクトInitMIP-Greenlandの解析を進めた。その結果、将来の気候変動に対する氷床の反応はスピンアップ実験、特に氷床の初期形状に影響を受けることが明らかになった(Goelzer+ 2018)。 グリーンランド北部のNEEM掘削孔では、氷の変形特性と酸素同位体組成に強い相関関係が示されている。すなわち、同位体組成から当時温暖であったと推定される時代の氷は流動性が高い。この関係はダンスガード・オシュガーイベントに代表される1000年スケールの変動について、掘削孔収縮とせん断ひずみ両方について成り立つ。そこで氷の流動促進係数と酸素同位体との関係を与える区分線形関数を決定した。この関係式導入によって、グリーンランド氷床モデリングの精度が向上する。 ArCSプロジェクトと連携して、グリーンランド北西部カナック地域の氷河氷床変動の解析を継続した(Tsutaki+ 2017, Sakakibara+ 2018)。ボードイン氷河にElmer/Iceモデルを適用して数値実験を実施した結果、現在この氷河はカービング端付近の基盤突起に影響を受けて比較的安定な状態にあるが、氷厚の減少が進めば不安定化する可能性が示された(Jouvet+ 2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本プロジェクトで雇用する博士研究員の決定が遅れていたが、2017年12月にチェンバース・クリストファー博士が採用されて、低温科学研究所のグレーベ・ラルフおよび杉山慎の研究グループで研究活動を開始した。チェンバース氏は数値モデリングに長い経験を持っているが、これまでは気象学的な研究分野で活動を行ってきた。従って、氷床モデリングに慣れるために時間が必要である。彼の主な任務は、底面水文過程と氷流動力学の導入によって、北東グリーンランド氷流の流動状態をより良く再現することである。これまでの研究活動によってある程度の改善が見られたが、観測されている氷床流動状態と十分に一致する実験結果を得るためには、引き続きの努力が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
グリーンランド氷床底面の地殻熱流量は、氷床底面の温度環境をコントロールするパラメータとして、氷の流動に重要な役割を果たす。地球規模の地殻熱流量分布と、グリーンランドの氷コア掘削サイト(GRIP、Camp Century、Dye 3、NGRIP、NEEM)で測定された値を組み合わせて、グリーンランド全域をカバーする地殻熱流量分布の更新・改良に取り組む。その結果は、様々な解像度を持った格子データとして整備する。 氷床の底面滑りは、特に氷流や溢流氷河のように速い流れを示す地域で、氷の流動に重要な役目を果たす。そこで、ひとつの氷期・間氷期サイクルにわたるスピンアップ実験を行い、現在観測されている表面流動速度を再現するよう底面流動則を最適化する。特に、新しいEGRIP氷コアの掘削地である北東グリーンランド氷流(NEGIS)に着目した解析を実施する。 2015年にCOP21会合で議論されたパリ協定は、今後の気温上昇を産業革命以前との比較で2.0℃、もし可能であれば1.5℃以下に抑えることを目標としている。この問題に絡めて、様々な気候変動下における2300年までのグリーンランド氷床変動を、2つの氷床数値モデルを用いて計算する。ここで検討する5つの模式的な気候変動シナリオは、気候を一定とした標準実験条件、一時的な過剰昇温を含むまたは含まない1.5℃および2.5℃の気温上昇条件である。 ISMIPのメンバーと連携して、最近の過去から将来までの詳細な気候シナリオを構築する。これらのシナリオはMIROC AOGCMと他のAOGCMの出力から抽出するもので、グリーンランド氷床を取り巻く大気と海洋気候の状態を含むものである。
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Research Products
(14 results)