2017 Fiscal Year Annual Research Report
実践的農業経営学の構築ー技術導入と人的組織形成の視点からー
Project/Area Number |
16H02572
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
納口 るり子 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00323246)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 勝史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 主任研究員 (00502890)
氏家 清和 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30401714)
松下 秀介 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50355468)
澤田 守 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, グループ長 (60355469)
山本 和博 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (70504124)
田口 光弘 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 主任研究員 (90391424)
澤野 久美 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 研究員 (10445851)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 農業法人 / 人材育成 / 経営発展 / 新技術導入 |
Outline of Annual Research Achievements |
開発技術の経営的評価の実践的なモデル分析については、昨年度に引き続き、評価対象とした事例経営や経営指標等のデータを収集し、数理計画法を用いた営農モデル分析によって、気象リスクを考慮した規範モデルの構築と精緻化を実施した。特に、土地利用型営農類型を対象とする降雨リスクを考慮した数理計画モデル作成支援プログラムDSCPを開発・実用化した。 雇用型農業法人における人的資源管理の取り組みに関しては、平成28年度に実施した、農業法人に対する大規模なアンケート調査の分析を進めるとともに、水田作・施設園芸・柑橘作・養豚などを対象とした事例調査を行った。 アンケート調査分析により、人材育成及び労務管理の実態を分析し、優秀な人材の確保と定着が大きな課題であることを明らかにした。また、人材育成・労務管理施策実施の有無により、離職率が大きく異なることが分かった。 大規模施設園芸作事例分析では、従業員における技能育成方策および定着率向上に向けた取組内容を解明した。大規模水田作の事例分析では、従業員間の情報共有及び生産工程管理が課題になっていることを明らかにし、課題解決に資するクラウド型工程管理システムのプロトタイプを開発した。養豚経営の事例では、従業員各々の業務範囲の明確化と分業化により、労働環境を改善して休日取得が容易になり、経営の収益性も向上したことを明らかにした。さらに、人事評価制度の見直しに伴い、従業員満足度の向上が図られ、収益性の向上に寄与したことを解明した。大規模柑橘経営事例では、新技術や従業員の導入、農地の取得、経営成ごと経営者の意思決定過程を明らかにした。また、幹部従業員育成は法人経営にとって重要な課題の一つであるが、ここに注目して、経営幹部を登用した背景や理由、幹部職員の役割、幹部職員を登用する上での課題を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通り研究が進んでおり、本年度だけでも9本(査読付きは6本)の学術論文が、発表されている。また、実用化に供する成果も発表している。研究課題全体として、大きな進捗が認められている。
|
Strategy for Future Research Activity |
開発技術の経営的評価を対象とした実践的なモデル分析については、気象リスクを考慮した規範モデルを応用し、期待される所得水準とその変動を同時に考慮した意思決定支援システムの構築を目指す。また、DSCPの実用化を目的として、マニュアル作成、webを通じた配布システムの構築を行う。 すでに詳細な事例調査を行っている水田作経営・園芸作経営・果樹作経営・畜産経営のそれぞれについて、事例調査のすり合わせを行い、一定の比較ができる形で調査内容をそろえる。施設園芸作については、従業員のモチベーション維持、職位整備、技能育成方策などをまとめた事例集を作成する。果樹作については、水稲作と比較しながら、ワークコミットメントの概念に着目して従業員の就業意識を把握するとともに、経営者の業績評価や昇進管理などの労務管理施策との相互関連を明らかにする。畜産経営では、従業員のキャリア形成に関する研究を深め、特に20~30歳代の若い世代の初期キャリアの形成に注目して取りまとめを行う。 平成28年度に実施した20法人の調査のうち、人材育成と経営発展について、積極的な方策を取っている経営を選んで追加調査を行い、経営規模や作目と人材育成方策との関係性の一般化について、事例調査とアンケート調査で得られたファインディングの補強を行う。 平成28年度に実施した農業法人アンケート(760法人程度)は、既に全体の分析を行って学会誌に投稿済みであるが、今後、過去13年間程度のアンケートデータを接続してパネル化し、人的資源管理と経営成長との関係性の解析などを行う。パネルデータはメンバー間で共有する。 それぞれの研究成果は、学会報告や学会誌論文として公表していくが、同時に、研究最終年度の取りまとめとして、研究成果の公刊図書としての発行を予定している。この図書には、当科研メンバーの論文と関連課題の研究者の論文を、併せて収録する予定である。
|
Research Products
(16 results)