2016 Fiscal Year Annual Research Report
我が国の都道府県別の疾病負荷とその活用に関する包括的研究
Project/Area Number |
16H02643
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渋谷 健司 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (50322459)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ギルモー スチュアート 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (20608913)
中岡 慎治 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (30512040) [Withdrawn]
阿部 サラ 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (60739530)
井上 真奈美 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任教授 (70250248)
山本 則子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (90280924)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 疾病負荷 / 健康寿命 / 健康格差 / 地域別健康格差 / 危険因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国レベルではなく都道府県別の疾病負荷を包括的に分析し、それを具体的政策分析にも応用する我が国で初めての試みであり、①都道府県別の疾病・危険因子による疾病負荷の推移の推計、②①に加えて都道府県別の疾病・危険因子による疾病負荷の将来予測、③各危険因子に対する介入の費用対効果分析及び都道府県別の有効カバレージ分析、④保健アウトカムに疾病負荷を用いた都道府県別の保健システムパフォーマンス評価方法の開発、⑤都道府県レベル以下の疾病負荷と健康の社会的決定因子の分析のための方法論の開発及び小地域における推計値の妥当性の検討、⑥我が国の都道府県別の疾病負荷分析を次世代Global Buren od Disease (GBD) 分析のベンチマークとして国際的に推進、⑦分析結果をより多くの研究者や一般の方が利用できるようにデータビジュアル化のためのウェブツールを作成することを目的としている。
このうち、平成28年度は主に、GBDデータを用いることにより①都道府県別の疾病・危険因子による疾病負荷の推移の推計を中心に研究を行った。我々の研究では、1990年から2015年の間に日本全体での平均余命は4.2年(79歳から83.2歳)延長したが、同時期に都道府県間の平均余命格差(平均余命が最も長い県と最も短い県の差異)は2.5年から3.1年へと拡大を見せた。同時期に、死亡率については日本全体では29.0%の減少が見られたがこちらも地域格差が大きく、一番減少率が高い滋賀県では32.4%だったのに対し、減少率が一番低い沖縄県では22.0%だった。同時期で主要死因に変化はなく、脳血管疾患・心血管疾患・下気道呼吸器感染が依然として主要死因であるが、これらによる死亡率は都道府県間で大きな差異があった一方、認知症による死亡率については地域間でも大きな違いは見られなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、本研究の主要部分である「都道府県別の疾病・危険因子による疾病負荷の推移の推計」を行い、1990年から2015年の間の平均余命、平均健康余命、主要死因について都道府県別の解析を行った。さらに、地域格差が生じた原因について、リスクファクター(喫煙、運動習慣、食習慣)や地域医療資源との関係性についても分析を行っている。これら成果については主要医学雑誌であるLancet誌へ現在投稿中である。さらに、「⑦分析結果をより多くの研究者や一般の方が利用できるようにデータビジュアル化のためのウェブツールを作成すること」に関係し、MEDITECH FINDER(http://meditechfinder.org)を開設。当該研究で得られた成果をわかりやすく広く一般に公開している。
一方で、平均余命、平均健康余命、主要死因の地域格差とリスクファクターの地域差の関係性についてはまだ包括的に評価する段階には至っておらず、加えて研究目的の②から⑥については現在も継続して研究を行っている途上であ流。これらについては、次年度以降に継続して研究を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に記載した、当該研究の目的のうち、②から⑥についてはまだ研究の途上であるため、これらについて引き続き研究を進める。また、平成28年度の成果として、平均余命、平均健康余命及び主要死因について地域間格差を明らかにしたが、こうした地域間格差が何に由来するのかについては、今後さらなる詳細な解析が必要である。とりわけ、リスクファクター(喫煙、食習慣、運動習慣等)や地域で活用できる医療資源(医療機関数や医療従事者数)、社会的要因(収入、教育歴等)と、健康指標(平均余命、平均健康余命及び主要死因)の関係性について都道府県レベルでの解析を進めていく。
上記を実施するに際しては、疫学、統計学、計量経済学、情報工学などの数量分析手法を駆使し、国内外の疾病負荷研究統括の実績のある研究代表者のリーダーシップのもと、異なる学問分野で実績のある研究者が連携して行う学際的な共同研究を推進する。それぞれ関連した研究項目に関して、時空間ベイズモデル、ベイズ統計を用いた小地域推計(small area analysis)、疾病のミクロシミュレーション、系統的レビュー、メタ分析、メタ回帰分析、世帯調査等の個票分析などの数量分析を行う。本研究を今後の世界標準とするためにも、報告書作成や内外の専門誌への投稿、国民への発信等を通じて、研究成果を広く社会へ還元する。
|
Research Products
(6 results)