2016 Fiscal Year Annual Research Report
近年の温暖化によるケニア山の氷河縮小と水環境の変化が地域社会に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
16H02714
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水野 一晴 京都大学, 文学研究科, 教授 (10293929)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森島 済 日本大学, 文理学部, 教授 (10239650)
手代木 功基 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト研究員 (10635080)
孫 暁剛 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, その他 (20402753)
荒木 美奈子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (60303880)
小坂 康之 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (70444487)
山縣 耕太郎 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (80239855)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 氷河縮小 / 水環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケニア山の氷河縮小と山麓水環境の関係性を把握するため、2016年7月-9月に現地調査を行った。ケニア山西麓および東麓の標高2000~5000mの間で河川水、湧水、氷河融解水、降水、湖水を採水し、サンプルの酸素・水素同位体比(δ18O、δ2H)を測定した結果、ケニア山および山麓域で標高ごとに採水された降水サンプルのδ18Oから、明瞭な高度効果(標高が高くなるにつれ酸素・水素同位体比の値が低くなる効果)が見られた。この高度効果直線の算出により、湧水および山麓域で利用される河川水の涵養標高を推定することかできた。西麓の標高1997m付近に流れ、住民に広く利用されるティゲディ川の酸素同位体比は-3.089‰であった。この値を今回得られた高度効果の直線(y = -469.35x + 3630.4)に代入すると5080.2(m)となる。その標高帯は氷河と積雪が多く存在することから、ケニア山西麓の河川水は氷河と降雪の影響を強く受けている可能性が高い。また、山麓の河川水位が1985~2016年にかけて減少傾向にあることが判明した。一方で、標高1972mの山麓湧水の酸素同位体比(-3.32‰)から、その涵養標高を推定すると5191.8(m)と算出されることから、山麓湧水においても山頂部の氷河と降雪が大きく寄与していることが示唆される。 今回の結果から、地域住民に広く利用される水の涵養源に対して、氷河と降雪が少なからず寄与していることが明らかになった。 ケニア山山麓湧水に対して、トリチウムとCFCsの測定を行なった結果、山体での涵養時から40~60年かけて山麓に湧出していることが明らかになった。以上の結果から、過去の5000m付近に存在した氷河の融解水が地下に浸透し、40~60年の時間をかけて流れ下り、現在の山麓に湧出している可能性が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年7-9月に本研究プロジェクトの7名がケニア山とキリマンジャロに入り、山頂から山麓にかけての水サンプルの採水や、氷河分布や氷河周辺の地形、土壌発達、気象、植物遷移の現地調査が行われた。山麓では地域住民による水の利用や農業について聞き取り調査が行われた。 3名の研究成果が、2017年3月の日本地理学会春季学術大会(筑波大学)にて発表された。また、3名の研究成果が2017年5月のアフリカ学会(信州大学)にて、2名の研究成果が2017年5月の地球惑星科学連合 JpGU-AGJ Joint Meeting 2017(幕張メッセ)の「山岳地域の自然環境変動」のセッションにて発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も地形、土壌、植生、水文、住民生活、地域社会の観点から調査を行い、近年の氷河縮小が地域社会にもたらす影響について明らかにしていく。前年度に設置した気象観測機のデータを回収して気象条件を分析する。また、氷河直下の地中に氷体を発見したため、その氷体が山麓の水環境に及ぼす影響を検討するため、電磁波を地下に照射することによって地下構造を可視化して、氷体の存在を開析する予定である。
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Research Products
(9 results)