2019 Fiscal Year Annual Research Report
期待オイラー標数法の深化と実用化,および関連する数理の展開
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16H02792
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
栗木 哲 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 教授 (90195545)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ボンフェロニ法 / ミンコフスキー汎関数 / 摂動展開 / 同時信頼区間 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. ガウス確率場に対するチューブ法と期待オイラー標数法は,相対近似誤差が指数的微小量となるという意味で精度の良い近似を与える.本年度はt分布から生成されるt確率場に対するチューブ法の漸近誤差を解析した.自由度が有限である限りボンフェロニ法を含むチューブ法の相対近似誤差は微小量とはならないことが明らかになった.一方でチューブ法近似は問題設定(モデル)によっては常に保守側,あるいは常に反保守側の近似を与えるが,その不等号の向きはガウスやt分布といった分布の違いにはよらないことも結論づけられた.以上のような性質を理解してチューブ法は用いられるべきである.結果は Kuriki and Wynn (2019), Electronic Journal of Statistics, Vol. 13, 1099-1134の一部に含めた. 2. 一般次元のミンコフスキー汎関数の弱非ガウス確率場の下での期待値を,3次キュムラントの項まで摂動展開した.またその結果を2019年度統計関連学会(滋賀大)にて発表した.その導出は数式処理システムを用いたブルートフォースなものであり,導出法についてはさらなる吟味が必要である. 3. ガウス過程回帰において,チューブ法による同時信頼区間を構成した.超母数の推定の影響を除いて,ガウス回帰過程の同時信頼区間はチューブ法の一般論で扱えることが分った. 4. クロネッカー構造を持つ分散共分散構造の最尤推定量の存在に関するMathias Drtonとの共同研究をテクニカルレポートarXiv:2003.06024 にまとめた. 5. 行列解析,確率,統計を横断する学際的な国内研究集会「確率・統計・行列シンポジウム 2019 立川」を2019年11月11日(月)~12日(火)に統計数理研究所にて開催した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初に研究実施項目に掲げた6項目のうちの5項目について一定の結果を出すことができた.特に Kuriki and Wynn (2019) を刊行できた.得られた結果のうちのいくつかは,今後の研究の推進方策に述べるようにまだ研究の余地があるが,その中でも項目1,2は発展的な研究課題であり,さらなる研究のひろがりを期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
以下の項目番号は,研究実績の概要のそれに対応する. 1. ガウス分布とt分布でチューブ法の誤差挙動が異なることから,分布の裾の挙動がチューブ法の誤差を決定することが強く示唆されている.例えば極値理論においては分布の裾で分類される分布クラスとその極限挙動の関係が明快に整理されている.チューブ法においても同様の対応を数学的にあたえることができると予想され,それは今後の研究の目標の一つである. 2. 本年度は数式処理で行った導出のプロセスを数学的に整理することによって,より高次のキュムラント項までの摂動展開を目指すことができる.また現在は境界の効果を無視した導出を行っているが,それは実際的ではない.今後は境界の効果も取り入れた解析を行う. 4. 論文投稿と刊行に向けた作業を行う. 5. 引き続き行列解析,確率,統計を横断する学際的な国内研究集会を開催する.
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Research Products
(2 results)