2016 Fiscal Year Annual Research Report
レジリエントな都市交通機能を実現する「認知,インフラ,制度」の相互改善型設計
Project/Area Number |
16H02907
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
荒井 幸代 千葉大学, 大学院工学研究科, 教授 (10372575)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 喜久 千葉大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70397024)
藤井 秀樹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (00597809)
松香 敏彦 千葉大学, 文学部, 教授 (30466693)
村木 美貴 千葉大学, 大学院工学研究科, 教授 (00291352)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 避難行動の規範抽出 / 鉄道運行整理 / 多目的強化学習 / 分散深層強化学習 / データ同化 / 対話 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では「災害時の都市交通のレジリエンスを実現する目的」で,(1) 人間の認知構造を踏まえ,(2)土木インフラ(ハードウェア),および,(3)緊急時規制の法的インフラ(ソフトウェア)の3つから課題を抽出し,解決法の提案,実証を推進する.以下(1)~(3)ごとの実績を概観する. (1) 人の認知と行動規範:近年注目されている深層学習が,主として状態の識別モデルであるのに対し,強化学習という最適行動学習アルゴリズムを組合せた深層強化学習を群衆が存在する状況の認識と行動計画に利用するための方法に取り組んだ.この成果は「久世,荒井ら:マルチエージェント深層強化学習による状態空間の爆発問題の回避」に著した.ここでは深層学習の中間層の解析方法にも言及し,論理的なルールベースとして蓄積する方法を引き続き精査する.ここでは個人の認識に限定しているが,「松香ら:地図課題対話における共有信念更新のメカニズム」では人間同志の対話モデルに言及し, H29年度以後実施する「群衆における対話がもたらす行動への影響を予測するシミュレーション」の理論ベースとして発展させる.(2) 土木インフラ:「板垣,丸山ら:東北地方太平洋沖地震津波による平面道路被害の分析」や「瀬崎,丸山ら:車載カメラ画像を用いた道路の地震被害抽出に向けた基礎検討」では,過去の土木インフラの被害分析とそのパターンを抽出した.(3)制度インフラ:首都圏での災害時は従来の法規制とは異なる緊急体制が想定され,「藤井ら:岡山市における路面電車駅前乗り入れ効果の定量予測-交通流シミュレーションを用いたバーチャル社会実験」では,規制が変化した際の人,物流への影響を議論するための結果として重要である.以上,H.28年度は,人,土木,法制度のデータ収集と解析を実施し,以後の相互作用モデル構築につながる成果をおさめることができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人の認知,行動規範,意思決定に関しては,松香が人間同士の対話ありモデル,荒井は対話なしを前提とした意思決定モデリングをそれぞれ進めており,対話による影響については,「地図課題対話における共有信念更新のメカニズム」は査読論文にまとめ印刷中である.また,荒井の強化学習と深層学習を繋ぐ実装は完了しており,中間層からの論理的構造の抽出方法については,「マルチエージェント深層強化学習による状態空間の爆発問題の回避」と題した講演論文にまとめ,群衆における各人の深層強化学習から,設計者の恣意的な判断なしに,ほぼ自動で論理的ルールを生成する枠組みを示している.論理的なルールベースが整えば,社会シミュレーションに適用することが可能になるため,課題実現に向けて,重要な成果と位置づけることができる. 土木インフラに関しては,丸山を中心に,過去の被害の実データを用いて被害解析,被害パターンの類型化を進めた.具体的には,「東北地方太平洋沖地震津波による平面道路被害の分析」では津波による道路被害の予測につながる成果を示しており,「車載カメラ画像を用いた道路の地震被害抽出に向けた基礎検討」では,被害に関する情報をいち早く共有し,危険回避するための方法へとつながる成果が示されている.過去の土木インフラの被害分析とそのパターンを抽出した. 法制度については,人とインフラのダイナミクスに関するモデルが精査された段階で詰める予定であるが,「岡山市における路面電車駅前乗り入れ効果の定量予測-交通流シミュレーションを用いたバーチャル社会実験」によって,日常が変化した場合の,人を含む交通の流れの変動を観察することを可能にし,この成果は,以後の2年間で3つの立場からの相互作用を実証する実験計画上,非常に重要な知見を示している.以上から,H.28年度の成果は,当初の計画に沿った進捗と判断する.
|
Strategy for Future Research Activity |
人の認知,行動規範,意思決定に関しては,松香の「地図課題対話における共有信念更新のメカニズム」で示された地図を題材とした人間同士の対話モデルを,避難における位置情報等の共有方法へと繋げ,荒井の分散深層強化学習モデルの統合,および,論理ルールの抽出法を引き続き精査する.中間層からの論理的構造の抽出方法については,「マルチエージェント深層強化学習による状態空間の爆発問題の回避」と題した講演論文にまとめ,群衆における各人の深層強化学習から,設計者の恣意的な判断なしに,ほぼ自動で論理的ルールを生成する枠組みを示している.論理ルールの抽出方法は,記号接地問題でもあるため,本課題のみならず,AI研究の古典的課題への糸口にもつながることから,引き続き推進する. 土木インフラに関しては,丸山らによって類型化された,過去の被害の実データを用いて被害パターンに基いて,被害予測へと繋げる方法論の開発段階へと進める.「東北地方太平洋沖地震津波による平面道路被害の分析」結果を用いた"津波による道路被害予測や推定法"や,「車載カメラ画像を用いた道路の地震被害抽出に向けた基礎検討」結果に基づいて,"災害発生直後に被害状況を精度よく推定する方法"へと展開する.この方法が確立できれば,被害に関する情報をいち早く共有し,被害最小化が実現できる. 法制度については,首都圏の法制度のうち,災害時の減災の妨げになるものを抽出することを目的として,バーチャルなシミュレーションの準備に入る.H.28年度に得られた「岡山市における路面電車駅前乗り入れ効果の定量予測-交通流シミュレーションを用いたバーチャル社会実験」の結果に基づいて,日常が変化した場合の人の行動規範の変化/非変化のモデルを精査して,妥当性の高いモデルへと洗練する予定である.
|