2017 Fiscal Year Annual Research Report
外来魚の根絶を目指した不妊化魚の大量作出のための技術開発
Project/Area Number |
16H02984
|
Research Institution | Okinawa Churashima Foundation |
Principal Investigator |
中村 將 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 動物研究室, 参与 (10101734)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 健 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (40336219)
野津 了 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 動物研究室, その他 (70774397)
加賀谷 玲夢 帝京科学大学, 総合教育センター, 助教 (90722132)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ティラピア / 高水温 / 不妊化 / メダカ / ヒートショッププロテイン / 生殖細胞 / アポトーシス / 駆除 |
Outline of Annual Research Achievements |
高温処理による不妊の恒久性を確認するため、孵化後10~15日の雌雄カワスズメに37℃45日以上の高水温処理を施し、処理終了後200日の生殖腺を観察した。雌カワスズメの全ての個体の卵巣は外形的には一対の細い紐状の形態を示し、成熟した卵母細胞は確認されなかった。組織学的にも生殖腺内に生殖細胞は認められず、不妊であることを確認した。雄については、約7割の個体の精巣は外形的にも組織学的にも不妊であることを確認した。一方、残りの個体は精巣の一部にコブ状の組織が形成され、組織学的観察の結果、精子形成をしていることが明らかとなった。これらの個体は腹部を圧迫することにより排精が確認され、機能的不妊化が不完全であることが予想された(中村、野津)。 成熟したカワスズメ及びナイルティラピアの稚魚を用いて、高水温飼育による不妊化を試みた。そのうちカワスズメについては小笠原諸島父島の野生個体の繁殖行動を参考にして、高水温処理群と対照群の行動に違いが見られないか、また、それぞれの群のふ化率に違いは無いかを比較検討した。その結果、高水温飼育群も対照群と同様の行動を行ったが、生殖腺(精巣)の外観および組織学的観察の結果、不妊化は不完全であり、ほぼ全ての卵が孵化した(加賀谷)。 前年度に引き続き、メダカの生殖細胞増殖における熱ショックタンパク質(HSP)の役割を明らかにするため、HSPファミリーの発現制御因子である熱ショック転写因子1(HSF1)のノックアウトメダカの表現型解析を行った。その結果、高温処理によるHSF1ノックアウトXXメダカにおける生殖細胞の増殖抑制は、高温処理による抗ミュラー管ホルモン受容体2(AMHR2)の発現上昇とアポトーシスによる生殖腺体細胞数の減少が原因であることが示唆され、HSF1が生殖腺体細胞を介して生殖細胞の増殖を保護している可能性が示された(北野)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高水温処理による不妊化の恒久性を確認するため、作製した不妊化魚の長期飼育による生殖腺への影響を検証している。昨年度までに、①孵化後10-15日の雌雄カワスズメを37℃、45日以上処理を施し不妊化魚を作製し、②処理終了後約200日時点で処理個体の生殖腺を組織学的に観察した。その結果、雌雄ほ多くの個体で不妊であることが確認され、高水温処理で完全に生殖細胞を死滅させることができれば、その後は再生しないことが示唆された。一方、少数個体の精巣にはコブ状の組織が形成され、精子形成していることが確認された。これは大量の個体を処理した際に処理(水槽)環境が完全には一様でなかったため、一部の個体の少量の生殖細胞が生存したためだと考えられる。今後は、大量の不妊化魚を一層高率に作出するための適当な処理環境/条件を検証するとともに、引き続き長期飼育による生殖腺への影響を調べる。 ナイルティラピアの成熟魚を37℃の水温条件で50日間飼育したところ、生殖腺の組織学的観察により不妊化が確認された。カワスズメに関しては小笠原諸島父島の野生個体の行動を参考にして、成熟魚を37℃で55日飼育した群と対照群の間に繁殖行動やふ化率に違いがないか比較検討した。その結果、高水温飼育群も対照群と同様の行動を行ったが、生殖腺(精巣)の外観および組織学的観察の結果、不妊化は不完全であり、ほぼ全ての卵が孵化した。 メダカの生殖細胞増殖における熱ショックタンパク質(HSP)の役割を明らかにするため、HSPファミリーの発現制御因子である熱ショック転写因子1(HSF1)のノックアウトメダカの表現型解析を行った。その結果、高温処理によるHSF1ノックアウトXXメダカにおける生殖細胞の増殖抑制は、アポトーシスによる生殖腺体細胞数の減少が原因であることが示唆され、HSF1が生殖腺体細胞を介して生殖細胞の増殖を保護している可能性が示された。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究の最終年にあたるので今までの結果を取りまとめて効率良い不妊化の方法を呈示する。また、不妊化個体を用いた野生化した個体の絶滅方法の提案作成を目指す。 申請書の計画の様に、高水温で不妊化処理後約三年間の長期飼育した雌と雄の生殖腺の状態を調べて、不妊化が半永久的な不妊化であることを確認する。不妊化した雄、正常成熟雄、雌とを一定の割合で飼育して飼育して稚魚出現が抑制される割合を明らかにする。 高温処理により発現量が急上昇するhsp70.1遺伝子のノックアウトメダカ系統を作製して、その個体の生殖細胞数やアポトーシス状況等を調査する。
|
Research Products
(4 results)