2017 Fiscal Year Annual Research Report
日光の社寺を例とした漆塗り建造物と最先端科学技術の融合研究
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16H03107
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
藤嶋 昭 東京理科大学, 学長室, 学長 (30078307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺島 千晶 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 准教授 (00596942)
鈴木 智順 東京理科大学, 理工学部教養, 准教授 (50256666)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 漆 / 光触媒 / 紫外線防止 / 真菌叢解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
日光東照宮の漆材や周辺環境から培養法で得られた分離株を同定するために,系統解析を行った。さらに,培養困難な真菌の存在を確認するため,採取試料からDNAを抽出して,次世代シークエンサーを用いた非培養法的真菌叢解析も行った。 培養法の結果,漆材からはPenicillium属とCladosporium属に近縁な真菌が主に得られ,周辺環境からはTrichoderma属真菌等が得られた。これらは一般的な環境中でよく確認され,漆材特有のカビとは認められなかったが,周辺環境から採取したカビとは異なっていることから,漆材に生じたカビは周辺環境由来ではない可能性が示唆された。 非培養法的真菌叢解析の結果,漆材からはBaudoinia属真菌が最も多く,次いでNeofusicoccum属真菌が多く確認された。周辺環境からはAspergillus属真菌が最も多く,培養法でも確認されたTrichoderma属真菌も存在が確認された。 一方,漆材への光触媒コーティングについては,TiO2とSiO2の混合膜とすることで透明性を維持し,漆本来の意匠性が損なわれないことをヘイズ測定等で明らかにした。ところが,混合膜が薄膜であることから十分な紫外線吸収が行われず,下地の漆材への紫外線劣化を防止することは困難であった。また,光触媒作用による漆材への酸化分解反応も見られたため,中間層にSiO2を検討し,さらにSiO2に色素を含有させたゾル-ゲルコーティング技術を開発した。UV照射強度を30mW/cm2に設定した加速劣化試験により,紫外線照射後のIRスペクトルや色差を測定することによって,光触媒コーティング有無による漆材劣化挙動を調べた。漆材にUV連続照射を12時間行うと色差変化量は8を示したのに対し,光触媒コーティングを施した漆材では変化量は0であった。このことから色素含有SiO2中間層とTiO2/SiO2混合膜を積層した漆材では,意匠性を保持しつつ紫外線による劣化を防ぐことが可能であると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養法による系統解析は順調に進んでいる。また,漆の意匠性を維持しつつ,紫外線劣化も防ぐ光触媒コーティングにも目途が立った。さらに,光触媒殺菌効果の検討を行うため,Aspergillus oryzaeによるプレ実験を行い実験条件を決定し,分離株に対する光触媒殺菌効果の検討を行う準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
純粋分離した34株のうち,13株の系統解析が終了していないので,引き続き解析を進めていく予定である。また,非培養法的真菌叢解析で解析していない試料があるので,それらの解析も進め,培養法と合わせて真菌叢の解析を行っていく予定である。さらに,、TiO2コーティングガラスを用いた光触媒殺菌効果の検討は,漆材から採取した分離株で行う予定である。 また,周辺環境の試料数が不足しているため,再度日光へ試料採取に行く予定である。そして,漆材に発生するカビの由来の推定を行っていきたいと考えている。 光触媒殺菌効果は,平成29年度に目途を立てた光触媒コーティングガラス及び漆材で行い,効果が見いだせない場合は光触媒活性を向上させる等の改良を行う。また,殺菌試験以外には耐候性試験やフィールド試験を実施する予定である。
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Research Products
(24 results)
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[Journal Article] Solution plasma process-derived defect-induced heterophase anatase/brookite TiO2 nanocrystals for enhanced gaseous photocatalytic performance2018
Author(s)
Sudhagar Pitchaimuthu, Kaede Honda, Shoki Suzuki, Akane Naito, Norihiro Suzuki, Ken-ichi Katsumata, Kazuya Nakata, Naoya Ishida, Naoto Kitamura, Yasushi Idemoto, Takeshi Kondo, Makoto Yuasa, Osamu Takai, Tomonaga Ueno, Nagahiro Saito, Akira Fujishima, and Chiaki Terashima*
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Journal Title
ACS Omega
Volume: 3
Pages: 898-905
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Selective inactivation of bacteriophage in the presence of bacteria by use of ground Rh-doped SrTiO3 photocatalyst and visible light2017
Author(s)
Yuichi Yamaguchi, Sho Usuki, Yoshihiro Kanai, Kenji Yamatoya, Norihiro Suzuki, Ken-ichi Katsumata, Chiaki Terashima, Tomonori Suzuki, Akira Fujishima, Hideki Sakai, Akihiko Kudo, and Kazuya Nakata*
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Journal Title
ACS Appl. Mater. Interfaces
Volume: 9
Pages: 31393-31400
DOI
Peer Reviewed
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