2017 Fiscal Year Annual Research Report
形態と表面物性が変化する感温性粒子の調製と細胞取り込み制御
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16H03184
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
菊池 明彦 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 教授 (40266820)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生体材料 / ナノ材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、形状と表面物性が環境温度で変化し、細胞内取り込み制御を実現しうる感温性コア-コロナ型微粒子の調製を目的にしている。本年度は、37℃で微粒子表面が比較的親水性の微粒子で形状の違いのみが細胞との相互作用に与える影響を明らかにするために、コロナには転移温度を45℃に有するポリ(N-イソプロピルアクリルアミド-co-N,N-ジメチルアクリルアミド)(P(NIPAAm-co-DMAAm)を、コアにはガラス転移温度を43℃に有するポリ(プロピルメタクリレート-co-メチルメタクリレート)(P(PMA-co-MMA)を用いた微粒子を調製した。微粒子を含有する水溶性フィルムの一軸延伸を行いアスペクト比(長軸/短軸)が4.0程度のロッド状微粒子を得た。種々異なる温度でのロッド状微粒子の形状変化を追跡するとともに、温度変化に伴う分散状態の変化から表面物性変化を明らかにした。表面が比較的親水性で、形状の異なる微粒子とマウス肺胞由来マクロファージとの相互作用を37℃において、比較検討した。マクロファージによる微粒子の取り込み挙動を比較すると、球状の微粒子はその表面が比較的親水性であってもロッド状微粒子に比べ24時間の接触で2倍近い取り込みが起こることが明らかになった。すでに親水性表面と疎水性表面を有する微粒子では比較的疎水性表面を持つ微粒子がより細胞に取り込まれることが明らかになっているが、比較的親水性表面を有する微粒子であっても、微粒子形状が細胞取り込みに与える影響が大きいことが示された。この結果は、細胞と微粒子との接触面積の違いが大きく影響するものと考えられる。 今後、生体温度近傍で表面物性も変化する微粒子との相互作用を比較検討することで、微粒子の形状、表面物性が細胞取り込みに与える影響を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、生体温度近傍の温度前後で表面物性と微粒子コアのガラス転移温度を制御することで、表面物性と微粒子形状を同時に、または独立に制御しうる微粒子の調製と細胞への取り込み制御を明らかにするために研究を行っている。本年度は特に微粒子表面の物性は比較的親水性に維持したまま微粒子形状が細胞取り込みに与える影響に着目して研究を推進した結果、微粒子形状が細胞取り込みに影響し、ロッド状よりも球状微粒子の取り込みが促進されたことが明らかになった。従来比較的疎水性で球状の微粒子が細胞取り込みに影響することが知られていたのに対し、本研究では、表面の親水性・疎水性の効果よりも形状が影響することを明らかにした結果は、興味深い。この変化に表面物性の変化が与える影響を議論することで、微粒子の形状と表面物性がどのように細胞内への取り込みに影響するかを議論できるものと思われるため、本研究は概ね順調に進んでいるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の実験では、比較的親水性表面を有し、形状の異なる微粒子の調製と細胞との相互作用解析を行い、微粒子形状が細胞への取り込みに与える影響を明らかにした。そこで、次年度は以下の点に着目した感温性微粒子設計を行い、細胞と微粒子との相互作用を明らかにする研究を展開する予定である。 (1)相転移温度を40℃近傍に有するポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)誘導体から成るマクロモノマーと、ガラス転移温度を40℃近傍に有するコアを有する感温性微粒子の調製とその物性解析:次年度は、細胞の生理活性が維持される温度近傍で、温熱療法にも適用される温度で表面物性や微粒子形状が変化する微粒子を調製し、その物性解析を行う。 (2)生体温度近傍でで形状と表面物性を変化しうる微粒子と細胞との相互作用解析:温度変化に伴う微粒子表面の物性変化が細胞取り込みに与える影響、並びに形状変化が細胞取り込みに与える影響をそれぞれ解析する。細胞は、マウス由来肺胞マクロファージ(RAW264.7)を用いる。微粒子には蛍光色素を導入し、所定時間接触後の細胞内への微粒子の取り込みを顕微鏡観察等から明らかにしていく。 以上の検討結果から、微粒子表面の物性や微粒子形状が細胞内取り込みに与える影響を明らかにし、診断、薬物キャリアとしての応用可能性も合わせて検討する。
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Research Products
(8 results)