2017 Fiscal Year Annual Research Report
脳卒中の帰結予測とリハビリテーション栄養：MRI脳画像による予測と必要熱量の推定
| Project/Area Number |
16H03209
|
|---|
| Research Institution | Hyogo Medical University |
|---|
Principal Investigator |
小山 哲男 兵庫医科大学, 医学部, 特別招聘教授 (40538237)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道免 和久 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50207685)
内山 侑紀 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (50725992)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
| Keywords | 脳卒中 / 帰結 / 予測 / 画像 / 栄養 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
脳卒中は本邦で罹患率が高い疾患であり、人口10万人あたり年間166人の発症が推計されている(Takashima et al. Circ J. 2017)。さらに脳卒中は、手足の麻痺による運動機能障害、さらに失語症や失行症など認知面の後遺症による障害を伴う場合が多い。これらより脳卒中は、要介護状態となる原因疾患の1位（18.5％）を占めている（厚生労働省 平成25年国民生活基礎調査の概況）。これらの患者の障害を軽減するため、効果的なリハビリテーションが求めれている。その第一歩として、患者ごとに、どこまで回復するか、どのような障害が残るか（帰結）を適切に予測することが必要である。
近年の研究により、発症後2週程度の拡散テンソル法脳画像（DTI）が、発症後半年程度の帰結の予測に有用であることが示唆されている。また最近、栄養状態を適切に管理することにより脳卒中患者の帰結が改善される可能性が指摘されている。本研究の目的は、１）DTIによる数値化指標で脳卒中患者の帰結予測モデルを作成すること、２）それらにより予測された帰結に応じた栄養管理の指標を定めること、３）両者の組み合わせにより、効率的なリハビリテーションの指標を作成すること、の3つである。
本研究グループは、これまでに脳卒中による脳内の神経線維の障害の程度を、DTIのパラメータの１つである Fractional Anisotropy（FA）値を用いて数値化し、帰結と関連づけることに成功している。今年度、これまで採集してきたDTIデータを用いて、病型別（脳出血、脳梗塞）に帰結との関連を解析した。手足の麻痺等の運動機能障害に関連の深い脳内の錐体路（大脳脚を含む）FA値の低下の程度は、病型に依らずほぼ同等に帰結と関連することの知見を得た（Koyama et al. J Stroke Cerebrovasc Dis 2018）。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、本研究グループは、これまで採集してきたDTIデータを用いて、DTI-FA値と帰結の関連を病型別に解析し、それらの統合を試みた。これまでに本研究グループが報告している帰結に関するデータ（Koyama et al. J Stroke Cerebrovacs Dis 2015, 2017）のさらなる解析から、脳出血患者は、脳梗塞患者に比べて、手足の麻痺の症状がより重く、日常生活の自立度が低く、発症直後の急性期加療を経て回復期等リバビリテーション専門病院から退院するまでの総治療期間が長いとの知見が得られた。本研究グループは脳内の神経線維の障害の程度を、DTI-FA値の病巣半球側と非の病巣半球側の比（rFA）を用いて指標化している。大脳脚（錐体路の一部）rFAは、手足の麻痺、日常生活動作の自立度と一致して、脳出血において、より低値であった。脳出血群と脳梗塞群のそれぞれで、手足の麻痺、日常生活の自立度、総治療期間と大脳脚rFAの相関係数を求めたところ、手足の麻痺、総治療期間でほぼ同様の結果が得られた。これらの相関関係の回帰直線を求めたところ、脳出血群と脳梗塞群でほぼ一致する知見が得られた。このことは、脳出血と脳梗塞に共通して、錐体路の一部である大脳脚の神経線維の障害の程度が、帰結予測に有用であることを示唆する。rFAと手足の麻痺の相関係数は中等度より強い（0.7程度）ものであった。このことは、脳出血と脳梗塞に共通して、大脳脚rFAによる帰結予測が概ね可能であることを示唆している。このことは上述の目的１）が間近に達成され得ることを示している。
|
| Strategy for Future Research Activity |
上述の目的１）の達成のため、手足の麻痺等や日常生活動作等の運動的側面のみならず、認知的側面に関する帰結予測の研究を行う。本研究グループの一連の脳卒中患者のDTI研究により、脳梗塞群において、認知面の自立度の低下と、脳内を前後に繋ぐ神経線維のひとつである上縦束の線維障害の関連が示唆された（Koyama et al. J Stroke Cerebrovacs Dis, 2017）。本年度、これを脳出血例に拡張することを目指す。脳出血例では、出血痕よりヘモジデリンが放出される。これは鉄を多く含むため、磁場を用いた検査であるMRI画像のアーチファクトの原因となる。DTI-FA値の計算において、これらの影響を最小とする手法（例：lesion maskを用いたtract-based spatial statistics法）を試す。これらにより、運動的側面に加えて認知的側面まで、さらに脳出血例と脳梗塞例に共通して適応できるDTI-FA値を用いた帰結予測モデルの構築を目指す。
上述の目的２）のためのデータ収集を継続して行う。具体的には、患者ごとの日々の喫食量（カロリーベース）、活動度、リハビリテーションにおいての筋力負荷、手足の麻痺等の運動障害の程度、言語や状況認識等の認知障害の程度、嚥下障害の程度や摂食量、そして筋肉量等の体組成の経時的変化を記録する。現在までに、急性期発症直後から2-4週おきに体組成計による筋肉量と体脂肪量の計測が可能な体制が構築されている。
|
Research Products
(3 results)
