2019 Fiscal Year Annual Research Report
脳卒中の帰結予測とリハビリテーション栄養:MRI脳画像による予測と必要熱量の推定
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16H03209
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
小山 哲男 兵庫医科大学, 医学部, 特別招聘教授 (40538237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道免 和久 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50207685)
内山 侑紀 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (50725992)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脳卒中 / 脳画像 / MRI / 補正 / アーチファクト |
Outline of Annual Research Achievements |
脳卒中は本邦において要介護状態となる原因の第1位である(平成25年国民生活基礎調査の概況)。その主要症状は脳損傷による手足の運動機能障害や言葉や空間認知の障害である。これらの障害の軽減のためにリハビリテーションが必要である。効果的なリハビリテーションには、脳損傷の定量評価により、どの程度障害が回復するかを予測すること、すなわち帰結予測が重要ある。 拡散テンソル法脳画像(DTI)は比較的に新しいMRI撮像手法である。その特色は、脳内線維障害の定量化(DTI-FA)が行えることである。我々のグループは、これまで10年以上にわたり、プログラミングによるDTI-FA自動解析を用いた脳卒中患者の帰結予測の研究を行ってきた。一連の研究成果により、発症後2週程度のDTI-FAが発症後半年程度の帰結と相関を示す知見を得た。 脳卒中の内訳に、脳の血管が詰まることによる脳梗塞、逆に破裂することによる脳出血がある。一連の研究対象の約半数は脳出血である。脳出血例では出血痕よりヘモジデリンが放出される。これは鉄を多く含むため、磁場を用いる検査であるMRI画像でアーチファクト(歪み)の原因となる。DTI-FAの計算において、その影響を小さくするための補正手段(例:lesion maskを用いたtract-based spatial statistics法)が用いられる場合がある。しかし、それには1例あたり数十分以上の手動操作によるデータ補正が必要である。さらに手動操作である為に解析の再現性が低下する。このことはDTI-FAの臨床応用にあたり解決すべき課題である。 令和元年度、脳出血例について、手動操作によるデータ補正を施した解析と、施さなかった解析を比較した。その結果、データ補正の臨床的意義は小さいものであることが判明した。この知見は自動解析によるDTI-FA評価が実用レベルにあることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳卒中患者の約7強割は脳梗塞、約2割は脳出血である。しかし一般に脳出血例は脳梗塞例より重症である。そのため長期にわたるリハビリテーションの対象となる患者は脳梗塞と脳出血でほぼ同数である。脳出血例では出血痕よりヘモジデリンが放出される。これは鉄を多く含むため、磁場を用いる検査であるMRI画像でアーチファクト(歪み)の原因となる。DTI-FAの計算において、その影響を小さくするための補正手段(例:lesion maskを用いたtract-based spatial statistics法)が用いられる場合がある。その補正は、1例あたり数十分以上の手動操作を要するため、臨床上実用的とは言い難い。令和元年度の研究成果により、このような補正の影響は臨床的リハビリテーションの見地からは小さいものであることが判明した。これにより、我々研究グループが取り組んできた脳卒中患者のDTI-FAの自動解析に大きな問題がないことが確かめられた。 最近のリハビリテーション医学領域の研究進捗により、栄養状態を適切に管理することにより患者の帰結が改善される可能性が指摘されている。脳卒中患者においても、これに支持的な知見が得られている。しかしこれまで、神経線維障害の程度を加味した栄養管理の具体的指標についての系統的研究はなされていない。本研究は最終年度までに、1) DTI-FAを用いた数値化指標で脳卒中患者の帰結予測モデルを作成すること、2) それらにより予測された帰結に応じた栄養管理の指標を定めること、3) 両者の組み合わせにより、効率的なリハビリテーションの指標を作成すること、を目標としている。令和元年度の研究実績により、DTI-FA自動解析の臨床的実用性が確かめれらた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度、上述目標1)に関して、年齢等の説明因子を加えて、より正確なものとする。予備的解析では、1) 脳出血例と脳梗塞例はほぼ同様に扱えること、2) 病巣半休と非病巣半休の錐体路(手足の運動神経の主要経路)のFA比が帰結予測に最も重要であること、3) 非病巣半休の錐体路FA値が高いほど帰結が良好であること、4) 年齢は手足の麻痺レベルには大きく影響しない反面、日常生活動作レベルの帰結に重要であること、が示されている。このように説明変数を追加して解説を進めて検討を加えることで、より洗練された帰結予測モデルを作成する。
さらに上述目標2) と 3) のためのデータ収集を継続して行う。具体的には、患者ごとの日々の喫食量(カロリーベース)、活動度、リハビリテーションにおいての筋力負荷、手足の麻痺等の運動障害の程度、言語や状況認識等の認知障害の程度、嚥下障害の程度や摂食量、そして筋肉量等の体組成の経時的変化を記録する。現在までに、急性期発症直後から2-4週おきに体組成計による筋肉量と体脂肪量の計測が可能な体制が構築されている。
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Research Products
(5 results)